2015年01月20日(火)22時59分
猿の話
故三宅久之氏の息子さんが狛江在住で、今日事務所に来られた。
考え方の似通った人ばかりと、そうだそうだとやりたい訳ではない。ほんとうに、語り合って、変わりたい、変えたいと望んでいる。ウチの映画祭は右も左もないという話をしたら、それならばチャンネル桜の映画とかもやったらいいですよとおっしゃる。
この方、今度の狛江市議選に立候補されるらしい。
菅直人事務所から電話。ここ喜多見の事務所に菅直人氏を呼んでの原発対話の会は、たぶん統一地方選挙後の五月。これから調整に入る。それまで、日本に何事もなければいいが。
だからさ、本丸はアメリカあたりにあるにしても、猿を選んだ人たちと、猿を担ぐ人を懲りずにまた選んでしまう人たちが、ごく身近にいるのではないかと…
映画祭でやるイベントの台本を考えなきゃいけないのに、その他にもやらなければいけないことがたくさんあるのに、僕はあの舌足らずの猿を最大級に卑しめる罵倒の言葉を探し続けている。よくないことだと知りながら。
「辛坊治郎さんが語るニュースのウラ側 狛江にゆかりの三宅久之さんを語る」という催しが、2月28日(土)、エコルマホールであるとのこと。僕も行ってみましょう。考え方が違うからといって門前払いするような、どっかの幼稚な猿のようなことはしない。それに狛江市民は無料だから。あれ、僕、川崎市民だった…
三宅何某氏からの、FBの友達申請、お受けすることにした。虎穴に入らずんば虎子を得ず? ちょっと表現がおかしいかな。得る「虎子」の想像がつかない。
【かなり時を隔てて追記】
※FBの「友達」、となれば、これからどんな関係になるのか分からない。どこで会うかもわからない、だから遠慮して書いた。でもそれから三年半、2019年6月、映画祭のため、広告のお願いで狛江のお店を回っていた頃、この日のことを思い出して呟いた。たぶん、その時を隔てて呟いたその呟きの方が、この日あった事実に近い。だからここに張り付けることにする。
そういえば、ウチの映画祭を応援してくれる狛江のお店の一覧を、「宝物に見える」といってウチの事務所に来た議員(その時は初当選前)がいたっけ。是非紹介してくれと。知らん、自分で回ればいいだけのことではないか。その人、映画祭のチラシを見て偏ってますねときた…
偏りたいわけではない。ただお金がないのでドキュメンタリー映画しかできなかった。ドキュメンタリーはどうしたって主義主張が強くなるという事情。
「何かいい映画ありますか」
あるならホントに上映したかったのだ。すると…
「チャンネル桜の作品がいいです」
その場にいたみんなの全ての目が点になった。
もしも「チャンネル桜」のどこが悪いのかとお思いの方がいらっしゃったら、ご自分の脳みそを疑ってみた方がいい。主義主張の問題ではない。メディアにおける「ファクト」について、きちんとお考えになった方がいい。
ただ、「貧すれば…」という問題は、権力を監視する大手新聞でも重要事になりつつある。若く優秀な人材は、金の落ちているところにしか行かない。それも時代なのか、少なくとも、金の落ちている場所は、昔とすっかりかわってしまったし、さらに言えば、志や矜持というものが、もはや権力に対峙する地平には存在しないのかもしれない。
本日の打ち合わせは、笑顔で。大月さん、SoRAさん、ヨロシクね。ココ狛江の街に高江の「むいからぬかじ」を吹かせましょう。 pic.twitter.com/jk3jTrXmFk
— 高山正樹 (@gajumui) January 20, 2015
2014年12月06日(土)20時00分
むいからぬかじ(森からの風)
沖縄やんばる高江の森に思いを馳せながら…
《出演》 大月ひろ美/SoRA/高山正樹
《特別出演》 世持 桜
第一会場(M.A.P.)
日時:2月1日(日)13:00 Open 13:30 Start
※本プログラムはライブ料金適用
⇒総合案内記事へ
ご予約は…
⇒CoRich(PC用)
⇒CoRich(携帯用)
またはM.A.P.まで直接お電話にて、お問い合わせもこちら:03-3489-2246
※会場にて、高江関連グッズを販売します。

《追記》
1月31日に、狛江泉の森会館にて「標的の村」が上映されます。でもその日は、極めてシンプルに(高江関連グッズ等の販売はありますが)上映だけ、ともかく見て知ってください、という主旨の企画です。
そこであらためて、日時および会場を変えて、高江の今を、みんなで語って考えようという企画を決めました。
出演する大月、SoRA、高山は、それぞれ高江の見張りに立った経験があります。大月さんは今、高江にいます。SoRAさんも沖縄、今回は辺野古メインですが、できれば高江にも足を伸ばしたいとのこと、最新の沖縄情報を聞けることでしょう。
三者三様の高江、三者三様の表現、さて、いかがなりますことやら。
特別出演の世持桜さんには、「標的の村」の中で女性がアカペラで歌っていた安里屋ゆんた、元々、八重山の抵抗の歌であった安里屋ゆんたを、本場の歌三線でご披露して頂きます。
たくさんの方々が来てくださればいいなあと、出演者一同願っています。
2014年11月14日(金)23時59分
仮チラシ“高江版“
表はこんな感じ…

そして裏です!

夜の、座・高円寺。
終演後のロビー
ラインの監視。観に来ていた西山水木姉さん(たった2日ですが)に、映画祭の宣伝に御協力頂きました。感謝です。 pic.twitter.com/KB54PUHPVh
— 高山正樹 (@gajumui) 2014, 11月 14
この後、水木さんは燐光群の会議に参加するとか、そこでチラシ配るよ〜と、十数枚持って行ってくれました。
姉さん、見にきてね!
2014年04月29日(火)05時30分
「標的の村」
監督:三上智恵

(C)琉球朝日放送
真っ先に座り込んだのは、あの沖縄戦や米軍統治下の苦しみを知る老人たちだった。強制排除に乗り出した警察との激しい衝突。闘いの最中に響く、歌。駆け付けたジャーナリストさえもが排除されていく。そんな日本人同士の争いを見下ろす若い米兵たち……。
本作があぶりだそうとするのは、さらにその向こうにいる何者かだ。
復帰後40年経ってなお切りひろげられる沖縄の傷。沖縄の人々は一体誰と戦っているのか。
【上映日時】
1)5月30日(金)13:00~
2)6月6日(金)16:00~
⇒喜多見と狛江の小さな小さな映画祭+α オフィシャルサイト
このブログで初めて高江のことを書いたのは2009年の12月25日でした。
そして去年の第一回映画祭でも取り上げました。
⇒その告知記事
⇒その上映会の記事
それらを含めて「高江」のカテゴリ記事は40個を越えます。しかしどのくらいの方々に読んでいただけたのか、心もとない話です。
しかしこの一年間で、その高江を題材にしたドキュメンタリー映画「標的の村」が大ヒットしました。それによってとってもたくさんの方々が、今、沖縄の高江で起こっていることを知りました。だから、もう私たちが、この「標的の村」を取り上げる必要はないのではないかと一度は考えました。
でも、ふとここ東京の端っこの喜多見と狛江の境あたりで周りを見渡すと、やっぱり高江のことはほとんどの方がよく知らず、まして「標的の村」を見たという方にはほとんど出会うことはありません。現地沖縄の状況だって何も変わらず、むしろ「標的の村」が訴え目指すのとは逆の方向へ押しやられているようです。
そして、「標的の村」をここで上映する意味を見出しました。
5月30日の上映後はMilk Kyatライブ!
6月6日の上映後は、ゆんたく高江から、伊藤紀克さんと大月ひろ美さんをゲストにお迎えしてトークショーを行うことにしました。テーマは…
“映画「標的の村」大ヒット、そしてその先へ”
皆様のお越しを、心からお待ちしています。
2013年06月21日(金)19時00分
映画祭初日の無料企画「沖縄やんばる高江を考える」を考える…
⇒「ゆんたく高江」のカテゴリ記事
初日、17時からのイベント…
⇒「沖縄やんばる高江を考える」
無料のイベント。あの映像のロングバージョンも見ていただこうという企画。もっと人が集まるだろうとタカを括っていたのです。「ゆんたく高江」からも、たくさんお仲間が来てくださるのかとも思っていたのです。でも、そうはならなかった。
沖縄の北谷で沖縄の役者たちが演じた朗読劇「私の村から戦争が始まる」の映像も流すことにしたのだけれど、それもさほどに皆さんの興味を引くものではなかったようですね。
ボクは再び、「ゆんたく高江」のイベントの日の深夜に呟いた僕自身の呟きを反芻しています。
根無草の如き自由人たち…
高江のために戦うことはきっと象徴なのだと…
そこに住む人々を置き去りにしたような…
一篇の童話のような…
「ゆんたく高江」からひとりだけ、歌手のnaccaさんが来てくださいました。選ばれてしまったのかなあと、ちょっと心配。でも、素敵な歌を聞かせてくださいました。

中川五郎さんも、静かに聞き入っていました。
naccaさん、今日はホントにありがとう。
そして、今度naccaさんとゆっくり話す機会があったとしたら、僕はnaccaさんに是非聞いてみたいことがあるのです。
「naccaさん、あなたにとって、高江は、何なのですか」と…
この日の夜の上映は「壊れた五つのカメラ」、やっぱりその記事も分けることにしましょう。
【追伸】
青年劇場の女優さん、大月ひろ美さんも来てくださいました。大月さんは「壊された五つのカメラ」も見ていかれました。その後の夜の宴会の時に撮った画像ですが、大月さんが写っている(左下)ので、ここにアップしておきます。

(残念ながらnaccaさんは忙しくて、高江のイベントの後、すぐにお帰りになりました。)
2013年06月02日(日)23時40分
“ゆんたく高江”の日、高江についての呟きたち(6/1~4のツイート)
【一昨日の「ゆんたく高江」についてのツイートを、こちらの記事に移した】
明日の「ゆんたく高江」で、僕が演じるのはこの人、伊佐真次さんです。 http://t.co/PYHGpAMP6t pic.twitter.com/bHhApj4gZ8
— 高山正樹 (@gajumui) 2013年5月31日
【そして今日】
駅があたらしくなった下北沢。
「わったー村から戦争がはじまる」は、5時前から。
ユーストリームとやらで中継するらしい。
【次の日に呟く】
gajumui
下北沢タウンホール。次々とやってくる人の波。御幣を恐れず言う。彼らに共通する傾向。ユニークな自分を表現することに躊躇ない自由な若者たち。高江の、沖縄のイベントなのに、いわゆる沖縄色は少ない。だからか、沖縄芸能関係の公演でいつも見かける人たちが殆どいない。この、パラレルワールド。
06-03 18:20根無草の如き自由人たちが、高江のために集い、静かな声で(時には大きな歌声で)語り合う。今日一日、ずっと思いに耽っていた。いったいどう言ったら、この深夜の感覚を理解してもらえるだろう。国や故郷が無くても、「僕が自由であること」が、残された唯一の、そして大きな希望であるはずなのだが…
06-04 02:53だが、どんなに自由でも、残念ながらこの地球から逃れる事などできるわけもなく、だから「高江」は、「高江」のために戦うことは、きっと象徴なのだと、そこに住む人々を置き去りにしたような、一篇の童話のような思いに囚われて、僕は、深夜だというのに眠れずにいるのだ。
06-04 02:58高江を思って音楽やアートに涙し感動することと、音楽やアートに涙して高江を思うこととは違う…と、僕はきっと、深夜という思索の森に迷い込んでいるのだ。朝になれば、何を考えていたのか自分でも分からなくなるだろう。だから朝までもう少し、僕の言い草を、どうか見逃してくれ、と、呟いてみた。
06-04 03:21先日の日曜日、「ゆんたく高江」最後のカチャーシー、なんと僕に三線をやれと、あげ!リーディングの中でちょこっとならいざ知らず、全てのイベントの〆ですよ、いくらなんでもそりゃあきっついすよ。これだけ大掛かりの沖縄関連イベント、他に誰か適任者がいるだろう、でもいないのだった。(続く
06-06 11:56続き)大城美佐子さんの弟子、堀内加奈子さんが来るという。じゃあ彼女にやってもらえばいいと安堵した。石原岳さんのステージにゲスト出演を終えた彼女にカチャーシーのお願い、ところが最後までいられないと。あげ!やっぱり僕がやるの?途端にリーディングの台本読むどころじゃなくなった(続く
06-06 12:11続き)因みに堀内加奈子さんは僕のブログでおなじみの井上真喜ちゃんのお友達で、僕の仕事の相方の宇夫方路さんの父上、隆士さんがスペインに住んでいた 時、加奈子さんは隆士さんの家に訪れ、三線の演奏会を開いたことがあるのだ。うーん、やっぱり沖縄は狭い。どっかで繋がっている。(続く
06-06 12:23続き)因みに井上真喜ちゃんは沖縄在住の映像プロデューサー。喜多見と狛江の小さな映画祭でも、彼女が作った沖縄関係の映像を、BGVで流します。あ、これ、映画祭の新情報です。ブログの真喜ちゃんのカテゴリ→ http://t.co/Pxh4gMyM4p (続く
06-06 12:27続き)さて、唐船ドーイは断念、豊年音頭だけで何とかしようと楽屋で三線三昧。他の皆様は台本読んでるっていうのになんてことでしょう。と、トイレから本番前の知久寿焼さんのでっかい歌声。どうもすでに一杯ひっかけているらしい… 演目は進み、なんとかリーディングを終え、でも僕は練習。(続く
06-06 12:40続き)こりゃもうダメだ。そこで大月ひろ美さんに唄を頼む。西山水木ちゃんも嬉しい参加表明。これで百人力。そしてなんとかラスト大盛り上がり。でも石原岳氏曰く、こんな弱々しいカチャーシー始めてだって、うっせーや。しかし、自分の演奏で会場が狂喜乱舞する、これ癖になりそうです。(続く
06-06 12:48続き)昨日、とあるところで西山水木さんと会いました。水木さん、豊年音頭の唄、まだ練習してるらしい。さすが西山水木の女優根性。よし、では僕も猛特訓しておこう。水木さん、今度は唐船ドーイを含めて、力強いカチャーシーで共演しましょう!(続く
06-06 13:03続き)なんで日曜日のことを延々と呟いたのか。堀内加奈子さんのこと。お名前も、彼女が大城美佐子さんの一番弟子だということも知っていたのですが、知るもっと以前、どこかで会った事があるような、そして今日、やっと5年前のことを思い出したのです。http://t.co/tRg9lFaKCb
06-06 14:09


【さらに日が変わる】

【6月6日のツイート】
2013年01月14日(月)23時58分
宮澤章二の「よごれた川」という詩(1/14のツイートまとめ)
起きてまずPCを立ち上げ、何より先にツイッターというのは、なんともいただけないとは思うのだが。
gajumui
雪。しばらく使っていなかった線量計に充電する。ブログなるもの。200年、もしかしたらそんな先まで残ってしまうかもしれない記録。そこに、雪にはしゃぐ能天気な日本人という自分を刻みたくはない。200年後、その頃の人類もきっと原発の傷に苦しめられている。あるいはあざ笑い、軽蔑している。
01-14 10:50 線量計の充電は、PCに繋いでやるしかないのである。FULLになるまで数十分かかる。僕は充電中の点滅を確かめて、暖房もつけたまま母屋へ向かう。普通なら3分のところ、倍以上の時間がかかる。靴はグショグショである。10年以上前、我が家のサッシに娘が書いた詩です。それを女房が消さずに残していました。僕は子どもの学校に一度も行ったことがないダメ親父で、今までちゃんと読んだ事がなかったのです。今日雪が降って、浮き上がった幼い頃の娘の文字に涙しました。
http://t.co/WDdYItPh
01-14 12:00@ootsukiusako 是非伺いたいと思っていたのですが、この雪、帰り、喜多見までたどり着けるのかどうか…
01-14 13:54 喜多見の事務所で仕事がある。本当は昼間のうちに喜多見へ行きたいのだが、そうすると阿佐ヶ谷へ行く時間がなくなりそうだ。自宅から直接阿佐ヶ谷へ行くしかない。自前の線量計を充電したものの、雪で事務所まで行けないのでRT @komaenokodomo 1月14日 13:30 雪 No.1 radi1000 0.054μSv/h 起動後160sの数値 通常通り
01-14 14:06 よくわからない。それは実に魅力的ですが、我が家は山の上で、最寄り駅の読売ランドの駅までたどり着けないことが判明。まことに残念ですが、本日は断念せざるを得なくなりました。 @ootsukiusako
01-14 18:15@ootsukiusako 高江で見張りしていた数時間、ずっと三線を弾いていました。都会では味わえない至福の時でした。帰りの車で、連れて行ってくれた女性にその話をしたら、「高江でただ本を読んでいたり、贅沢ですよね。何もなければ」と。今晩の会、いい時間にしてください。
01-14 18:34雪で夜の予定を断念して書斎に籠もっている。正月に帰ってきていた娘が、同志社を創立した新島襄の奥さんは、あんまりかわいい印象ないよみたいな話をしていたのを思い出して…、あれ、久米明さん、「鶴瓶の家族に乾杯」のナレーション辞めたのかしらん… http://t.co/Ppp9CyQW
01-14 20:03ふーん。菅家って会津に多い苗字なんだ… http://t.co/LwOWsdEm
01-14 20:32次回予告で久米明さんの声。よかった。安心しました。 http://t.co/G0QSiRfL
01-14 20:45「今回南部戦跡に初めて行って…」って、そんなやつが沖縄担当大臣なわけ?話も薄っぺらいなあ。山本某という大臣の顔がスルメに見えてきた。
01-14 21:26いかん。こういう呟きをしてはいかんのだ。床屋さんで髪切ってもらってるんじゃないんだから。
01-14 21:27大学が準備したアップル日本の元社長の講演をわざわざ聞きに行くのって、ジョブズからもっとも遠い行動に思えてるが…。ダメだ。テレビなんか点けているからおかしな呟きばかりになる。
01-14 21:47
遅い朝飯を食う。
外が暗ければ我が家も暗い。食っているものが何なのか判別できないほど暗い。電気くらい点ければいいのにと言えば、女房はもったいないと言いながら渋々蛍光灯をひとつ点ける。節電の理由は環境ではなく家計の問題である。それが今日はいつもよりずっと明るい。質素な食事がよく見える。どうやら雪の所為らしい。

「あれ、こんなこと書いてあったんだ。ちゃんと読んだ事なかったもんなあ」
「…」
「で、何なの、これ」
「小学校三年の時、暗誦してた。いい先生だったって…」
「ふーん」
「字書くの好きだったからさ」
女房との会話は、いつもこんな感じなのだ。
何故か目頭が熱くなった。たぶん、ひとすじ涙が零れた。それを女房に気づかれないように、とっとと飯をかっ込んだ。
女房が部屋を出たスキに、サッシに書かれた文字を携帯で撮影した。
「ごちそうさま」
「…」
「じゃ向こう行くわ」
「今日は?」
「夜、出かけたいところがあるんだけどね」
「お昼さ」
「いらない」
「夜は?」
「この雪だからなあ、わからん」
充電は終わっていた。
台所から適当な容器を見つけて、それに線量計を入れてベランダに出した。

こんな時、「放射脳」というような、今、最も薄汚い日本語のひとつだと僕は思っているのだが、そんな言葉を持ち出す輩がいる。線量を測るだけで、非国民だとでも言いたげな阿呆たち。あるいは、例え雪が汚染していたとしても、空間線量なんか測ったって何にも分かりませんよというしたり顔の者の一群。彼らには、線量を測る人は、結果変わらなければ大丈夫と言い、ちょっとでも高ければ危ないと叫ぶ愚か者にしか見えないらしい。
ただ知りたいのである。少しでも自分自身で知り、そして判断したいのである。耳を傾けるべき声の持ち主は、そういう人たちの中にしかいないと僕は信じている。
そしてさっき撮った画像を、ツイッターとフェイスブックで使うために、少しだけ明るく加工した。暗い我が家を見られるのが、なんとなく嫌だったのである。そして呟いた。

調べてみた。
この「よごれた川」という詩は、宮澤章二という人の作品であった。
全文は、次のようなものである。
よごれた川
なぜだか知らないわからない 川から取れたそのフナは からだのまがったフナなんだ
なぜだか知らないわからない からだのまがったフナの目に なみだがひかっていたんだよ
なぜだか水にも毒がある 泣いてるようなそのフナは やっぱり病気のフナなんだ
なぜだか水にも毒がある からだのまがったフナなんて へんだとみんながいうんだよ
なぜだかよごれた川だけど さかなはどこへ行けるだろ どこへも行けずに生きている
なぜだかよごれた川だけど だまって泳いで生きている フナにはお医者もいないんだ
唱歌にもなっているらしい。とすれば、youTubeあたりで探せば出てくるのかもしれない。だが今の気分を音楽で乱されたくないので、しばらく探さないことにした。
線量は0.09μSv/h…

もともとこの書斎は高いのである。加えて最近このベランダで計ったことはない。だから、この数値が何を意味するのか、さっぱり分からない。普段と変わらないといえばそうだし、一昨年の事故後と同じと考えれば気にかかる。結局、この雪にα・β核種が含まれているかどうかなのだが、αもβも、誰も彼も忘れてしまったかのようだ。海外の報道は全く違う。外から今の日本人はどう見えているのだろう。
ネットでは、雪で軒並み0.01~0.02の線量上昇というデータが公開されている。震災前から、雪の日はそのくらい上がるものだという人がいる。また、今の雪には色々な有害物質が含まれているのだから、雪に塗れて遊ぶことを避けなければいけないのは放射能とは関係ないと、別の人が言う。
福島より遠く、海外より近いところ。沖縄。
先月から、つまり去年から、阿佐ヶ谷の“あさがやイネル”というカフェで「ゆんたく高江展」という催しが行われているらしい。気になっていながらまだ行けていない。今日、そこで青年劇場の「普天間」に出演していた女優さんふたりのトークショーがある。そのお一人、大月ひろ美さんとは、ツイッターやフェイスブックで時々やり取りをしている。女房に今夜出かけたいところがあると言ったのはそれのことであった。しかし…
ツイッターのタイムラインに、狛江での線量測定データが流れてきた…
ベランダの線量が、0.01上がった。

さてどうするか。放射能交じりの雪を恐れているわけではない。帰りの足を心配しているだけのこと。ほぼあきらめた頃、大月さんから返信があった。
「私も今、まずは阿佐ヶ谷までたどり着けるかどうか、が危ういです、が、頑張ります。いらしてくださいとは何とも言いにくい日ですね。ま、電車がないなら、動くまで呑むという手もあります(^^)」
そうきたか。それなら気合を入れなおしてとも思ったが、もう5時半、そしてここはちょっとした山の上、自宅の周りの道は、もはや歩ける状況ではなくなってしまった。
大月さんの返信…
あら、まぁ…この雪では、そうでしょうね…。残念です。こちらは無事に阿佐ヶ谷につきました。どんな時間となるのやら、ドキドキします。
放射能というやつが、雪ほどに自己を主張するものならば、「僕」と「貴方」だって一緒に考えていけるはずなのに、放射能があんまり目に見えないものだから、きっとこんなにギクシャクするのだろう。
出掛けないと決めてしまえば、このシェルターに籠もって考え事をするしかない。リアルタイムの交通情報を確認するために点けていたテレビ。もう用はないのだから、消してしまえばよかったのだけれど。
僕はテレビを消した。すると、降圧剤を飲むのを忘れていた事に気がついた。
あれ、晩飯、食ったっけかなあ。
もしかすると僕は、「からだの曲がったフナ」なのかもしれない。
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