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「東国」のアクセントに拘ってみる

年明け最初の稽古です。
場所は、川崎区にある京浜協同劇団の稽古場。
京浜協同劇団の看板
「全日本リアリズム演劇会議」か、歴史を感じますねえ。

null僕の名前が抜けていたチラシですが、それも修正してくださいました。
しかし「順不同」ってなんなのでしょう。決してデジタルでランダムな処理をしたわけでもなさそうですし、後から付け加えた僕の名前が最後というのが、ランダムでない証拠。まあ「順不同」というのは、並べた順に特段の意味はありませんから気にしないでくださいという意味なのでしょうからいいんですけれど、これだけの人数の最後に並べられると、いくら「順不同」と但書があっても、なんとなくこそばゆい感じがするのです。真ん中あたりにそっと紛れ込まして頂ければ心穏やかだったのに、なんて。

新しいチラシでは最後なのですが、実際の舞台ではどうやら最初に声を発することになるらしい。役名は「旅僧(たびそう)」。いわば能におけるワキ。ストーリーテラーに話すきっかけを与え、それから始まる物語では聞き手という役どころです。

芝居は旅僧の名乗りから始まります。そして主人公稲毛三郎重成の妻である綾子の化身の蝶に誘われ広福寺にたどり着く。そこで、ひとりの老女に出会います。その老女は、かつて重成の侍女頭であった八重。この八重がこの芝居のストーリーテラーで、目の前の旅僧に昔を語って聞かせるという形で舞台の前半は進んでいくのです。
つまり、本筋だけなら旅僧なんていなくても十分成立するのですが、しかしそのスパイスみたいな存在によって、芝居は二重三重の構造となって深さが増すというわけ。古の平安を現代に繋ぐ役割といっては言い過ぎでしょうか。しかし、スパイスは好みの別れるところ、なんとも責任重大であります。


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さて、配役が100%決まっての初稽古、まずは頭から読み方や発音、アクセント(日本語の場合はイントネーションと言ったほうが適切かもしれませんが)などのチェックです。「鼻濁音が乱れていますねえ」という演出ふじたあさや氏の指摘。軽いジャブですな。

しかし、沖縄の言葉やその歴史を学び初めてから、僕は鼻濁音についての印象がすっかり変わってしまいました。特に最近、唄三線で古典を習うようになって、意識しないと出てしまう鼻濁音を、逆に封印する練習ばかりしているのです。鼻濁音を一切使わないというのもなかなか難しいのです。

でも、今回は平安の時代劇をやろうとしているわけですから、鼻濁音を「正しく」使うことは、必要なことなのでしょう。ただ、あたかも役者はいつでも「正しい鼻濁音」を使わなければならないと言い切ってしまうような表現は、それは違うのではないかと思うようになりました。

今までもM.A.P.after5や「社長とは呼ばないで」などで、鼻濁音について色々と書いてきました。そのいくつかをどうかお読みください。
 ⇒沖縄語の音韻講座、プロローグ(1)
 ⇒日本語の二大美点?
こんなことを言うから僕はまた敵を作るわけなのですが、性分なので仕方がありません。

仕方ないついでにもうひとつ言っちゃうことにします。

旅僧の「名乗り」は次のような台詞です。
「これは、諸国一見の僧です。このほど鎌倉に参り、寺社をめぐり、いくさの跡を尋ねての帰り道、足を伸ばして、東国の、鎌倉殿ゆかりの寺々に参ろうと思いまする。」

僕はこの中の「東国(とうごく)」のアクセントを( ̄___)と読んだのです。しかしこれに対して、ある超有名劇団のベテラン俳優さんからこんな御指摘を頂きました。「東国」を( ̄___)と読んでは「唐の国」に聞こえる。(_ ̄ ̄ ̄)が正しいのではないか。
ありがたき御教授、まず僕は、素直に受け入れて読み直することにしました。しかし何故かしっくりこない。
僕が「東国」を( ̄___)と読んだのには、それなりのワケがあって、僕の固い脳みそが、その「ワケ」をリセットできずにいるらしいのです。
「東国」を( ̄___)と読んで「唐の国」に聞こえるか否かはともかくとして、「東国」という言葉を実生活で使うことがあったとしたら、確かにおっしゃられる通り、僕も間違いなく(_ ̄ ̄ ̄)と発音します。にもかかわらず、この芝居において「東国」を( ̄___)と読みたいと思ったのは何故なのか。

その大きな要因として、この芝居の冒頭の「名乗り」を、「様式的」にしなければならないということがありました。
といって、能や狂言そのままに演ずるわけでもない。いったいどのように「様式的であること」を表現すればいいのか、まだまだ決めることはできません。そこでまず僕は、一音一音を浄瑠璃のように粒立てて語ってみること、そしてそれに加えて、「東国」を( ̄___)と読んでみることで、古典的な様式の「感じ」を付加することが出来るのではないかと思ったのです。
そう思ったのは感覚でしかありません。しかしその感覚は、僕のいくつかの知識やこれまでの経験によって、僕自身にはそれなりに根拠がありました。

日本語のアクセント(イントネーション※以後アクセントに統一)は、大雑把に言えば東と西の系統に大別され、いわゆる「標準語」はもちろん関東系、特段の地域性を芝居に持たせないのならば、たいがいそれ準じます。まして今回の芝居は東京に近い川崎の郷土劇なのですから、「標準語」のルールに従うのは当然でしょう。

しかし、古くは日本において関西のアクセントしかなかったという説を聞いたことがあります。少なくとも、古典的な芸能の多くは、京都あたりで成立したようです。「東国」を( ̄___)と発音するのが関西系のアクセントであるかどうか、その正確な知識は持ち合わせていないのですが、古典芸能のアクセントが、いわゆる標準語のアクセントとちょくちょくこれに類した差異を示すという感覚が僕にはあります。
そこで、(_ ̄ ̄ ̄)と発音するのが現代ではしっくりくる言葉を、あえて( ̄___)と発音することによって、一種の古典的な雰囲気が表現できるかもしれない、これが、僕がこのアクセントを選択した「ワケ」です。

そうした「理屈」が独り善がりなものであれば、勿論とっとと捨て去るべきですが、さて。

今から30年以上前のこと、「宗論」を演じたことがあります。しかしそれは狂言でも落語でもなく、台詞つきの日舞でした。
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指導してくださったのは名古屋の花柳流の重鎮、花柳芳五三郎師の御曹司である花柳伊三郎さんです。その冒頭にこんな台詞がありました。
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「まかりいでたる者は、都、東国の僧でござる。この度、思いたって……」

これが伝統的な台詞、文言であるのかどうかは不案内なのですが、少なくとも狂言の名乗りではありません。狂言の名乗りなら「このあたりの者でござる」というだけ、名乗らないのが狂言の名乗りで、こんな風に素性を明かしてしまう名乗りは狂言にはありません。
もしかすると、伊三郎さんの実験的創作であったのかもしれませんが。

この時、この「東国」を( ̄___)と伊三郎さんの口伝で語った微かな記憶が僕にはあるのです。とはいえ、名古屋出身の伊三郎さんですから、それだけの原因で( ̄___)と発音されたのかもしれません。だとすれば、これもいつまでもこだわるような話しではありませんが、確かにその時の経験によって、ひとつの感覚が植えつけられたということも事実のようです。

それから数年後こと、ひょんなことから、僕は講釈師の小金井芦州の弟子となり、今はなき本牧亭で前座を務めるような短い一時期がありました。
 ⇒28年の時を隔てて【小金井芦州のこと】
僕は芦州からよく「訛ってやがるなあ」と言われました。子供の頃3年ほど京都に住んでいましたが、これでも山の手生まれの山の手育ちです。訛っている自覚は全くないのですが、どうやら標準語と江戸弁の講談とでは、その発音もアクセントも似て非なるものだったようです。

講談には台本があります。しかし、修行はもちろん全て口伝です。
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最後の講釈師と言われた名人との一対一の稽古、それは貴重な時間でした。そしてこの経験においても、「東国」を( ̄___)と発音する「感覚」は、むしろ補強されたというふうに、今思い起こしてみると感じるのです。

最近、落語を演ずる機会がありました。三笑亭夢丸さんの新江戸噺のひとつ、「紅い手」という怪談噺を朗読するという企画です。
その「紅い手」の中に、「中仙道」という言葉が出てきました。普通に語れば「なかせんどう」は(_ ̄ ̄___)です。それが山の手で育った僕の感覚です。しかし、夢丸さんからお借りしたテープでは、師匠は( ̄_____)と語っていらっしゃいました。落語は個々自由な芸ではありますが、言葉の発音やアクセントなどの基本は口伝です。何度かその通りになぞっているうちに、なるほどこの方が、落語にはしっくりくると感じられ始めたのです。終演後、文芸評論家の大友浩さんとお話をさせて頂きました。その際、大友さんも中仙道をやはり( ̄_____)とおっしゃられたのを聞いて、なるほどとあらためて納得したのでした。

後で調べて分かったことなのですが、中仙道を( ̄_____)というアクセントは、少し古い言い方であるらしいのです。東海道もやはり古くは( ̄_____)といっていたらしい。そういえば小金井芦州の「芦州(ろしゅう)」も、若い人たちは(_ ̄ ̄先生)と言っていましたが、年配の方々は( ̄__さん)と呼んでいらっしゃいました。

因みに、僕の手元にあるNHK編の『アクセント事典』(昭和41年発行)には、「中仙道」も「東海道」も、そして「東国」も、ふたつのアクセントが併記されているということを付け加えておきましょう。しかし全て二字目上がりのほうが先の表示ではありますが。
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さてここで、ご存知の方も多いでしょうが、山田耕筰氏が作曲した「赤とんぼ」の歌詞の「あかとんぼ」のイントネーションについてお話しようと思いました。しかし、先にご紹介した大友浩さんが、それについて僕などよりはるかに深い薀蓄を書いていらっしゃるサイトを見つけたので、そのリンクを貼り付けておくことにします。是非お読みください。
 ⇒http://www.honza.jp/author/5/otomo_hiroshi…
(※但し『アクセント事典』では「あかとんぼ」は(_ ̄ ̄__)の記述しかなく、落語では常識という( ̄____)の記載はありません。)

さて、では「東国」をどうするか、いまだ結論は出ていないのです。しかしです。僕は始めに「『東国』を( ̄___)と読んで『唐の国』に聞こえるか否かはともかくとして」と書きました。しかし、舞台の上でお客様に言葉を伝えるのが仕事の役者たるもの、発した言葉が正確な意味で伝わるかどうかは、「ともかくとして」しまうようなことではないはずです。その意味では、僕のアクセントについて御指摘くださった大先輩のお言葉には、しっかりと耳を傾けなければならないのだろうと思います。
(文責:?山正樹)


ということで(というか、にも関わらず、というか)、色々な方に聞いてみることにしたのです。そしてまずは身近な方々に聞いてみることにしました。それから、今後も引き続き聞いてみようと思っているのです。粘着気質の役者の試み。それらは《続き》でご覧あれ……

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tag: 京都  方言  小川信夫  ふじたあさや  「枡形城落日の舞い」  朗読 

てげてげ

本日は名目2009年12月の12日。
一昨日、つまり10日の夜、沖縄空手の番組をやっていた。
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正確にいうと昨日11日の午前1時、TV局風にいえば「おととい10日の25時」。

さきほど、岡山からでっかい梨が届いているということをカミサンから聞かされた。
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あんまりでっかいのでリンゴと並べて写真を撮ったが、いつ誰から届いたのか、肝心なことを聞きそびれた。
来年も岡山には御縁がありそうだ。
 ⇒子ども劇場の日程が決まった日の記事

今月の1日から、おきなわおーでぃおぶっくの作品がFeBe!というサイトからダウンロードできるようになった。
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これで携帯でも聞けるようになったのかどうかは不明。値段もCDより安い。
 ⇒その案内記事
山猫合奏団の“どんぐりと山猫”と“セロ弾きのゴーシュ”もアップしたいのだが、白石准氏がミュージカルで楽しく遊んでいて忙しいらしくて、必要な手続きが整わない。

この記事は、実は13日の昼に書いていて、今から12日の日付でアップする。
たった今、テレビで某知事が宮崎では「いい加減」のことを「てげてげ」といい、沖縄の「テーゲー」は宮崎から渡った言葉で、海を渡っている間に「てげ」を1個海に落としちゃったというようないい加減なことを言っている。1.5秒くらい「諸説あります」というテロップが出た。

ネットで注文した「沖縄民俗辞典」が、明日13日、僕の手元に届く。
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ネットで買ったといっても、amazonで買ったわけではない。

なんで、明日届く本の画像があるんだ?
だって今日は13日だから。

なんとも、テーゲーな記事でした。

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tag: 空手  おきなわおーでぃおぶっく  方言  山猫合奏団  白石准 

三笑亭夢丸師匠がトリ 国立演芸場3月中席千秋楽

この日、奏楽舎の深川公演のチラシをHPにアップした。
奏楽舎深川チラシ




今日は、三笑亭夢丸さんの40日間トリ興行の最後、国立演芸場3月中席の千秋楽です。演目は「いろがたき」。
3月中席

5月20日の深川江戸資料館での公演のチラシをお届けに、国立演芸場へお伺いしました。もう、あと2ヶ月しかありません。

国立演芸場楽屋口

「入りはいかがですか」
「末広亭も浅草も良かったんだが、なんだか国立がねえ、大入りが一回こっきりでね、笑いがなんだかねえ、控えめなんですよ。やっぱり不景気ってことかねえ」

劇場の方を呼んでいただいて、
裏から入れていただいて、
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中入りから後、見していただきました。

落語聞いても笑えないくらい不景気になっちゃ、おしめーだな…

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お見舞いに行って、そのまま桜新町へ。
おなじみの世界配信…
 ⇒http://www.bcphotoshare.com…
こんなもんがタダだったり200円だったり、家ん中で寝っころがって、怠惰に安く遊ばれたんじゃあ、なんともかなわねえなあ……

さあ、明日も仕事です。歩いて帰ることにしましょう。2時間はかかるなあ。企画室に着くのは、深夜2時くらいの予定…

tag: 三笑亭夢丸  東京奏楽舎  駒場28  健康ゲーム  方言 

小休止どす

たかやまはん。
今晩はな、七草のお粥さん、食べなはって、お酒なんか飲まんと、おとなしくしときなはれや。お正月で疲れた胃(いー)休めてな、ほうして、またあしたからゆるゆるとがんばらはったらよろしおす。

(宝塚のあいりちゃんから、うれしい年賀状が届いたのさ)

いったい何のことかって?
ないしょ……
 ⇒内緒だってばあさあ……

tag: 地図の仕事  花咲あいり  方言 

歌舞伎をハシゴ

朝7:30から2時間、事務所で仕事をやっつけて…
10:40、つくばエクスプレスの浅草駅に到着。
まだ松の内、考えてみれば50年生きてきたが、正月の浅草てえのは初めてだ。
やってるやってる、初笑い。
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でも、今日はココに用があるわけじゃあねえ。

ははあ、つくばエクスプレスで来ると、ここへ出るわけか。
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昼にはまだだいぶ間があるってえのに、天麩羅には、もう並んでやがる。せっかちなのか、のんびりなのか。
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さて、目的地、浅草公会堂に到着。
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新春浅草歌舞伎。若手中心の舞台だ。
待ち合わせていたカカアとも無事遭遇。

七之助が、昨日ワイドショーを賑わした兄貴を口上で弄(いじく)って、いよいよ開演。
まずは“一條大蔵譚(ものがたり)”
亀次郎の阿呆ぶりは愉快だが、七之助も勘太郎も、まだまだ親父にゃあかなわねえ。勘三郎は今頃歌舞伎座だ。

ふたつめの出し物までにはちっと時間がある。正月の仲見世でもひやかすか。
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初詣も、ついでにやっちまえ。
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線香の香りを腹のあたりに撫でくってやると、なんだか効きそうな気がするからおかしなもんだ。

公会堂に戻れば、間もなく“土蜘蛛”の開演だ。
蜘蛛?、おっとこいつはちょっとしたミステリー。忘れてくんねえ。

終演3:00。だが今日はこれだけじゃ終らない。

あの雷門のちょうちんを、裏から撮影したりして
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どうでい、珍しいだろうが。

都営浅草線で東銀座まで11分。
新橋演舞場。
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近くにこんな割烹があったり…
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ひつまぶしが食えたり…
食わねえけどよ……

指定席なんだから、何も並ぶこたあねえんだが。
せっかちで早えとこ中に入ぇりてえからよ……
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“初春花形歌舞伎”ときたもんだ。
16:30開演。まず“七つ面”があって
そして“封印切”
獅童も悪かあねえが、それより笑三郎が頗る(すこぶる)いい女に見えてくる。
さて本日のメインディッシュは“白波五人男”
海老蔵は、テレビでしゃべくる時は、なんとも詰まらぬ男だが、舞台の上では、特上の艶と色気。蛙の子は蛙。

しらざあいって きかせやしょう
おおむこうから こえかかり

わすれてた ごうしちごうの ちがさわぐ

終演21:00
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 今日のところは、事務所には
 戻ることなく、かみさんと
 けえるときめた、よしなにと
 電話を入れて、はらくくる

 問われず語るはみっともねえが
 言わずと知れた 高山正樹
 今日はなんとも 腹いっぱい
 天麩羅油に当たったような

 明日は早くから仕事しなくちゃねえ 字余り。

tag: 方言  二重母音  ミステリー