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「さわり」と「純音」《横道萬里雄さんを御招待できるような芝居にしたい》

今日も市民劇の稽古に自転車に乗って行ってきた。
一昨日の記事で、川崎絵都夫大先生の曲は、はたして「古の霊を呼び出す磁気を帯びているだろうか」と申し上げたことについて、いま少し補足しよう。

琵琶に、「さわり」というものがあることをご存知だろうか。わざとノイズを混ぜる仕掛けで、三味線にも受け継がれている。youTubeに三味線の「さわり」を説明している画像を見つけたので、まずそちらをご覧いただきたい。



フレットが低すぎる出来の悪いギターなど、弦をちょっと強く弾くと、本来触れてはいけない隣のフレットの金具に、弾いた弦が当たってジジーンというノイズが出ることがある。琵琶や三味線の「さわり」は、その「雑音」を意図的に出そうとする仕掛けなのである。

もういい加減に兵藤裕巳氏の著作『琵琶法師』から離れたい(あさやさんの罠から抜け出したい)のだが、なかなかそうはいかないらしい。兵藤氏は、薩摩琵琶を使った曲も作曲している武満徹氏のことを紹介している。
武満徹は、「薩摩琵琶などの盲僧(琵琶法師)系の琵琶におけるサワリの工夫を、『雑音(ノイズ)というものを媒体として自然世界に連なってゆく』ための積極的な方法」と位置づけているというのだ。
余談だが、山猫合奏団の白石准は、今度のしんゆり芸術祭で、ボクに南アフリカのサッカーW杯で話題になった応援グッズのブブゼラを吹かせようという魂胆を持っているらしい。白石准は、武満徹氏によって見出されて道が開けたピアニストである。もしかすると彼も武満氏のように「ノイズ」好きなのかもしれない。なんだかとってもそんな気がしてきた。
兵藤氏は更に言う。
「(サワリは)『自然世界』のざわめきに声をあたえる盲人芸能者たちの創造だったろう」

youTubeにはたくさんの琵琶の演奏がアップされている。第一人者である田原順子さんのものも数多くある。
(またもや余談だが、田原順子さんは、ふじたあさやさんも関昭三さんもよくご存知の方である。ボクのカミサンも、沖縄から東京に出てきた頃に、順子さんのご主人にはずいぶんとお世話になった。今回の市民劇でも、ボクの琵琶演奏指導を順子さんに頼むとかいうハナシもあるようなのだが、いったいどうなっているのだろう、ね、関さん。)
その田原さんの画像を貼り付けようかと思ったのだが、あえて数少ない男性、それも外国人の方のものにしてみた。そのほうが、きっと今日の記事の趣旨には合っている。



三つ目の余談。三味線の直接のルーツは沖縄の三線だという説もあるが、三線には「さわり」はない。沖縄の唄を、大和風のコブシを入れて唄うと「変だ」と言われる。ビブラートなどはもってのほかなのである。
「何もせず、ただまっすぐに歩くように唄う」
これが難しい。三味線と三線の違いについては、あらためていつか考えてみたいと思うのだが。

さて、ハナシを戻す。
同じ琵琶でも、雅楽琵琶には「さわり」はない。鳴る音は純音のみである。そこに穢れた異形の「もののけ」が入り込む余地はない。

川崎絵都夫先生の曲もまた、ざわめきを「ノイズ」として取り除いてしまった後の「純音」なのである。いくら耳を澄ましてみても、残念ながら異界からの風の音が聞こえてこない。おぞましい「もののけ」たちのうごめく声が、ボクの肌に触れないのである。ボクは、穢れた河原モノでありたいと願っているので、出来ることならば異界へと逃げ出したくなるのだ。

きっと、ステージングが始まれば、不本意なことが起き始めるに違いない。

「これは市民劇なんだから、市民劇なんだから……」

稽古場で、不機嫌な顔をしないようにしよう。そうでないと、またたくさんの敵を作ることになる。

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tag: 三線  「枡形城落日の舞い」  横道萬里雄 

東京琉球舞踊協会公演 “翔舞Ⅳ”今日は【とうがんの日】

国立劇場小劇場。
東京琉球舞踊協会10周年記念公演“翔舞Ⅳ”

《昼の部》
幕開きはもちろん「かぎやで風」
その他「四ツ竹」「前の浜」「作田節」「高平良万歳」「金細工」「鳩間中岡」「繁昌節」など。最後は「エイサー」

《夜の部》
「かぎやで風」「四ツ竹」「前の浜」「高平良万歳」「金細工」は昼の部と同じ。その他「かせかけ」「諸屯」「若衆特牛節」「たらくじ」など。
そして組踊り「執心鐘入」
 中城若松 藤原悦子(真踊流佳藤の会藤原悦子琉舞道場)
 宿の女 野原千鶴(琉舞鶴之会野原千鶴琉球舞踊研究所)
 座主 眞境名正憲(瀬底正憲:国指定重要無形文化財「組踊」保持者)
 小僧一 諸見喜子(玉城流敏風会関東支部諸見喜子琉舞研究所)
 小僧二 宇夫方路
 小僧三 関りえ子(玉城流喜納の会関東支部関りえ子琉球舞踊研究所)
  ⇒昨年11月17日の稽古風景と「執心鐘入」について

宇夫方路先生は中城若松が隠れている鐘の見張をする小僧役で出演。
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(小僧の居眠りの場面のみ特別に許可を頂いて掲載しています。)
さて、出来はいかがだったのでしょうか。批評眼がないので何とも申し上げられないのですが。
横道萬里雄さんが見に来てくださいました。楽屋の方へとご案内したのですが、いえいえと丁重にご辞退されました。残念ながら、横道先生のことを知っていらっしゃる方は殆どいなかったようです。
でも、後で瀬底先生にお伝えしたら、先生は横道萬里雄さんをよく御存じで、観に来てくださったことにたいへん感謝されていました。
いずれ時をみて、横道先生にお礼を申し上げ、御感想でも伺ってみたいと思っています。ちょっとこわいけど。

打ち上げの様子は、タグが足りないので記事を分けましょうね。

《おまけ》
りっぱなプログラムです。
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そこに、喜多見で沖縄語を話す会の広告を掲載しました。

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そうしたら、紅型の風呂敷がM.A.P.に届きました。
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ちなみに今日は4月10日で、とうがんの日です。
冬瓜をウチナーグチで[sibui]という、だから4。10は「とうがん」だから。ウチナーグチと日本語の合わせ技の語呂合わせ。

tag: シブイ  うちなーぐち  ゆんたくの会  紅型  沖縄この日何の日  横道萬里雄  瀬底正憲  琉球舞踊  執心鐘入  関りえ子 

最後の稽古、諸先生方に感謝!《船津好明,國吉眞正,瀬底正憲,横道萬里雄》

いよいよ明日、宇夫方路が組踊りに出演します。今日は泣いても笑っても最後の稽古です。

船津好明さん國吉眞正さん瀬底正憲先生とお話するために、国領の稽古場までいらっしゃいました。
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沖縄語の両先生を、組踊りの瀬底先生にお引き合わせできることになったのは、國吉先生が宇夫方路のために(?)沖縄文字で書いてくださった台本を瀬底先生にお見せしたのがきっかけです。
もちろん話題は、どうやって美しく正しい沖縄語を残すのか、そのための統一された分かりやすい表記の必要性について、です。

一般のウチナーグチでは使われなくなった音韻が、組踊りなどの古典芸能には残っているらしい。そんなことも、いずれこのブログでご紹介できると思います。

瀬底先生にご指導を仰ぎ、國吉さんに発音をチェックしてもらいながら稽古を重ねてきたわがM.A.P.の宇夫方女史、さて明日はどんな成果を見せてくれるのでしょうか。
教師になったばかりの大和出身の女性が国立劇場で「執心鐘入」の舞台に立つという「稀有な出来事」、いかなことになりますやら。

《追伸》
先日、横道萬里雄先生から、明日の組踊りの公演に来てくださるというお手紙を頂きました。これもまた大変ありがたいこと、宇夫方路ごとき若輩者に御連絡してくださったこと、これもまた稀有なことなのかもしれません。

多くの諸先生方に感謝感謝です。

宇夫方路を国領の稽古場に送り届けた高山正樹は、山猫合奏団の楽しき会議のために、喜多見の事務所へそそくさと戻るのでありました。
 ⇒山猫合奏団のブログへ続く……

tag: 瀬底正憲  横道萬里雄  船津好明  山猫合奏団  國吉眞正 

M.A.P.の真珠道はどこへ続くのか

現在の真珠橋。
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旧真珠橋は、沖縄戦で破壊された。

真珠橋には人柱伝説があった。それを聞いた役者、平良良勝が「真珠橋(またんばし)由来気」」(「七色元結」)という芝居を書く。初演は昭和10年頃。
そして大城立裕氏は小説『花の碑』を、また「嵐花」という芝居を書き……
「嵐花」のパンフレット
さらに2004年、新作の組踊「真珠道」を発表するのである。
《関連記事》
http://lince.jp/hito/arasibana…
http://lince.jp/hito/madamamiti…
組踊「真珠道」が東京の国立劇場で上演されたことはこのM.A.P.after5でも記事にした。だがそれ以上のことは語らなかった。というより、その背景にある歴史・文化・政治の深さを知れば、簡単に語れるものではなかったのだ。だが、今は、いずれ書いてみたいと思っている。

ちなみに、この大城氏の書いた「真珠道」を、横道萬里雄氏がその論評の中で絶賛したということを、後で知ったのである。
《横道萬里雄さんのこと》
 ⇒http://mapafter5.blog.fc2.com/…

気軽に、無責任に始めてしまったブログなのだが、だんだんと、そういうわけにはいかなくなってくる。

亘さんの弟子(?)の前城さんのお陰で、RBCテレビを訪れることができた。八木政男先生とお会いした時以来の琉球放送。前城さんも付き合ってくださった。感謝である。
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《一昨日のこと》
 ⇒http://mapafter5.blog.fc2.com/…
そういえば、亘さんも、横道萬里雄さんは大変な方だと言っていたっけ……。

RBCに、何しに行ったのかって? なんでもかんでも書いてしまうことは、もう許されないのかもしれない、と、思い始めているのさ。
そば家鶴小(ちるぐゎー)で…
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牛肉そば680円を食す。
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ボリュームがあって、安くて、おいしくて、こんなことなら、いくらでも書けるのだが。

tag: 沖縄そば  沖縄の呑食処.そば家“鶴小”  大城立裕  沖縄の旅_2009年11月  新作組踊  横道萬里雄 

横道萬里雄さんが生徒さん

琉球舞踊、仙川のカルチャーの生徒さんたちです。
横道萬里雄さんとともに
中央のお方は体験入学の方です。そして右側のお方は大江健三郎のお兄さん!
…ではありせん。新しい生徒さん、横道萬里雄さんです。なんと91歳!
「早いのはついていけないので、ゆっくりな曲だけやらせてください。」
そして早い曲のときは正座して見守ってくださいました。でも手だけは一緒に動かして、練習されていらっしゃいました。
椅子をお勧めしても、足をくずしてくださいとお願いしても、いえ、わたしはここで、と正座を崩されませんでした。

どこの誰だっけ? もうこの先、短いかもなんて焦っている人は。横道さんの爪の垢でも煎じてお飲みあそばせ。

追伸。
体験入学された方は、この日「楽しかった」とおっしゃって、正式に入会手続きをされてお帰りになりました。仲間が増えていくのは、とてもうれしいことです。

tag: その他の登場人物  金城多美子  MAP琉球舞踊教室  横道萬里雄  仙川教室