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ひと区切り

午前11時。


取り急ぎの御報告です。
沖縄那覇波之上の隣、神宮会館にて、無事琉球舞踊の師範免許を頂きました。東京に帰れば、またいつも通り、踊りの公演も続きます。頑張らなくっちゃ。
(宇夫方路)

師範授与



【高山正樹のいらぬ呟き】
2018年度(平成30年度と言うべきなのか、平成最後のといえばもっと意味深くなるのか)玉城流喜納の会の免許授与式。

教師2+師範2
左から新教師ふたり(上原崇弘さんと新垣史織さん)と新師範ふたり(西村綾乃さんと宇夫方路)。詳しく言えば喜天の会から宇夫方路、喜利の会から綾乃さんと新垣さん、そして本家喜納の会から上原さんということらしいが、なんともややこしい、綾乃さんのFacebookの投稿のように、全員あっさり玉城流喜納の会でいいと、ボクは思うのだ。

笑顔で記念撮影
谷田嘉子、玉城節子、宮里敏子(後列中央の三名)という大御所の面々が審議員で、その大先生方の前で4人が踊りを披露して、それぞれ教師や師範の資格があるかどうか、「いいんじゃないの」となれば無事免状を頂けるのだが、もしダメだって言われていたらどうなっていたんだろう?この花たちは無駄になってしまったのだろうか、なんてことは、きっと言ってはいけない。
届いた花たち

お弟子さんたちから

だからさ、ことさら「教師師範認定式」などと権威づける必要などなく、「授与式」でいいではないかなと。



あらためて。
琉球舞踊にも色々流派がある。玉城流は玉城盛重(1868~1945)を祖、玉城盛義(1887~1971)を師とする琉球舞踊界の最大流派で、したがって玉城流を冠する「会」は多数存在するが、その中で一番大きい「会」が玉扇会、因みに玉城節子さんは玉城流翔節会の家元である。宇夫方路が所属している(…のかどうか、所属とは何なのか、宇夫方に聞いてみてもボクにはよく分からない)喜納の会(玉城流の中では小さい会らしい)の現在の家元は伊波正江先生である。喜天の会や喜利の会のトップは家元ではなく会主である。家元のいる本家喜納の会と、会主をトップとする他の会とは何が違うのか。やっぱりいくら聞いても分からない。

伊波正江さん(二番目の画像の、後列左から二人目の方)は「喜納の会」の二代目の家元である。実は、「喜納の会」には初代の家元が存在しないのだと伺った。
正江先生の師匠は、正江さんの実の姉でもある喜納初子さんで、その初子先生の師匠である宇根伸三郎氏は、玉城流「七扇会」の家元。初子先生は、その実力なら伸三郎先生の「七扇会」から独立し、ご自分の会を立ち上げてもおかしくなかったのだが、生涯、七扇会を離れることはなかった。その初子先生がお亡くなりになって、妹であり弟子でもある正江さんが、初子先生の会として「喜納の会」を立ち上げ、その初代家元を初子先生とし、ご自分は最初から二代目の家元になられた。
もちろん、初子先生には妹の正江さんの他にも優秀なお弟子さんたちがたくさんいらしたが、「喜納の会」には参加せずに初子先生に倣ってそのまま七扇会にとどまられた方や、ご自分の会を立ち上げた方もいるとのこと。

今回の授与式の審議員でもある宮里敏子先生も七扇会で宇根伸三郎氏の弟子だったが、初子先生がお亡くなりになった時にはもう玉城流「敏風会」の会主になられていた。宮里敏子さん(男役)と喜納初子さん(女役)が踊る打ち組踊は、名コンビとして名高かったという。
宮里敏子と喜納初子

こんな記事を見つけてしまったのだ…
 ⇒琉球舞踊界の不都合な真実!
※このブログ主の志情(しなさき)さんは、今までもキジムナーフェスタや、創作舞踊コンクールなどについても、なかなか辛辣な記事を書いている。
そして…
 ⇒関連記事【重要無形文化財の琉球舞踊】

いったい何があるのか。
大和の素人が、あれこれ安易に論評することではないということ。

それはそれだとは思うのだが、さて、しかし。



もう10年近くモヤモヤ思っていること。和服のこと。留袖のこと。
 ⇒新春を寿ぐ 歌い初め・舞い初め華舞台
もう少し考えてから、そっと呟きだそうと思っている…



授与式の後の祝賀会も14時にお開き。
たぶんこれで、ひと区切りついた。
ひと区切り、つけなければいけないのだと思う。

ボクは、宇夫方路を、琉球舞踊の師範で終わらせるわけにはいかないのである。

tag: 琉球舞踊  西村綾乃  谷田嘉子  玉城節子  宮里敏子  上原崇弘  新垣史織 

宇夫方路沖縄へ【重要無形文化財の琉球舞踊】

旧暦1月15日
久米村では霊前にトーヌカシーイリチー(おからの油いため)とお粥を供えたそうである。

【第1報】
那覇空港に到着した宇夫方路から届いた画像。
ランふたつ。
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(35位)
これまでかな。


【第2報】
国立劇場おきなわで「伝承者研修発表会」がありました。
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沖縄県の指定無形文化財である琉球舞踊には「保持者」に認定された方と「伝承者」に認定された方がいます。今日はその伝承者の方々が、日頃の研鑽の成果を発表する会です。
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喜納の会の家元、伊波正江先生も伝承者に認定されていて、今日は瓦屋節を踊られました。

先生方の踊りは大変勉強になります。
でも、昨夜は午前2時過ぎまで事務所で仕事、2時間くらい寝て沖縄へ出発。移動中は寝たけれど、やっぱり眠い。そんな状態で、短いことばを数十秒かけてゆっくりと踊るような静かな古典を、何曲も続けて鑑賞するというのは、もうかなり厳しくて、ちょくちょく気が遠くなりました(笑)。
でも、もちろん正江先生の踊りは、目を見開いて、気が遠くなることもなく、最初から最後までしっかり見せていただきました。ほんとです!
(宇夫方路)
旅の続きへ


【高山正樹による追記】
「保持者」と「伝承者」って、どのくらい違うのでしょう。
以前の公演についての論評ですが、ある時の新聞に、こんな記事を見つけました。

伝承者それぞれが力量を示したが、唱えや所作に緊張や稽古(けいこ)不足を感じさせる表現もあった。子役も含め、舞台経験を積めばもっと良くなるという伸びしろを感じただけに、今後も伝承者としての自覚を持ち、保持者から多くを学び取ってほしい。

伊波正江先生は宇夫方路の先生の先生、つまり大先生で、二代目家元なんですよねえ。それでも「伝承者」、厳しいものですねえ。

ところで、昨年の9月に「琉球舞踊」が、沖縄では「組踊」以来37年ぶりに「重要無形文化財」に指定されました。自治体による「無形文化財」の指定は数多くありますが、「重要」と称されるのは国指定以外にはありません。
(「重要無形文化財」の指定基準は2月12日に書いた記事を参照してください。)
国の「重要無形文化財」の指定には、「各個認定」「総合認定」「保持団体認定」の3種類があります。
「各個認定」は個人に対する認定で、いわゆる「人間国宝」がこれに当ります。「保持団体認定」は団体に対する認定です。
さて「琉球舞踊」ですが、これはもう一つの種類の「総合認定」でした。「組踊」も同じ「総合認定」です。
「総合認定」とはその技量を持つ人たち(各舞踊家)をそれぞれ保持者として認定するのですが、その総合体(琉球舞踊)が認められることが前提です。(「総合認定」の場合では、保持者として認定された方々を「人間国宝」と呼ぶことは一般的にはありません。)

昨年の「琉球舞踊」重要無形文化財指定(総合認定)で国から保持者として認定された方々は次の39名です。

大城政子さん(舞踊:琉舞寿乃会家元)
宮城幸子さん(舞踊:真踊流代表)
島袋光晴さん(舞踊:島袋本流紫の会宗家)
谷田(金城)嘉子さん(舞踊:玉城流扇寿会家元:東京都在住)
志田房子さん(舞踊:琉球舞踊重踊流宗家)
宮城能鳳さん(舞踊:宮城本流鳳乃会家元)
親泊久玄さん(舞踊:親泊本流親扇会二代目家元)
眞境名直子さん(舞踊:宗家真境名本流眞薫会眞薫直の会会主:大分県生まれ)
玉城節子さん(舞踊:玉城流翔節会家元)
金城美枝子さん(舞踊:玉城流扇寿会家元:名古屋市在住)
玉城秀子さん(舞踊:玉城流玉扇会二代目家元)
喜納幸子さん(舞踊:真踊流佳喜の会会主)
又吉靜枝さん(舞踊:玉城流いずみ会家元)
佐藤太圭子さん(舞踊:琉球舞踊太圭流家元)
島袋正雄さん(野村流三線:2000年「各個認定」人間国宝)
玉城政文さん(野村流三線)
松田健八さん(野村流三線)
大城助吉さん(安冨祖流三線:安冨祖流絃声会会長)
新垣万善さん(野村流三線:大阪府生まれ)
照喜名朝一さん(安冨祖流三線:朝一会会主:2000年「各個認定」人間国宝)
城間徳太郎さん(野村流三線:2005年「各個認定」人間国宝)
平良盛勇さん(野村流三線)
金城武信さん(安冨祖流三線)
知花清秀さん(野村流三線)
西江喜春さん(三線)
玉城正治さん(安冨祖流三線:安冨祖流絃声会会長)
喜瀬愼仁さん(三線)
宮城正子さん(箏曲)
宮城文さん(箏曲)
又吉清子さん(箏曲)
高良時江さん(箏曲)
東江朝子さん(箏曲)
上地尚子さん(箏曲)
上原綾子さん(箏曲)
屋嘉比清さん(胡弓:大阪府生まれ)
嘉数世勲さん(笛)
大湾清之さん(笛)
喜舎場盛勝さん(太鼓)
宇座嘉憲さん(太鼓)

コンクールも「最高賞」まで。その先「教師」「師範」「会主」、さらに家元になってもまだ継承者。県指定の保持者と国指定の保持者の違いは門外漢には全く分かりませんが、少なくとも人数はずっと県指定の方のほうが多いようです。さらにその中から、個人としての孤高の芸を獲得した人が現れたとき、三線や焼物の金城次郎さんのような人間国宝が生まれるということなのでしょうか。
ここまで来ると、このヒエラルキーを決めるものは、全く別の要因という気もしてきますが、いずれにしろ、大和の全くの素人が論評することではなさそうです。自重します。

それにしても、世田谷区よりちょっと多いくらいの人口の沖縄県なのに、琉球舞踊の世界はすごいですなあ。宇夫方路女史、教師免状を頂いたとはいえ、まだまだヒヨッコということですね。

tag: 沖縄の旅_2010年2月  三線  琉球舞踊  沖縄芸能コンクール  沖縄この日何の日  玉城節子  照喜名朝一 

“おもろ響む”と豆知識【クウェーナ】

うるま市から戻って、お昼から西原で稽古です。
伊波正江先生(玉城流喜納の会会主)から、今晩の国立劇場に誘われました。
“おもろ響む”
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録音する手段を持たなかった時代に、消えて無くなりそうな“おもろ”を、誰がどのようにして残してきたのか、それを芝居仕立てで紹介するという創作舞台。
“おもろ”とは、奄美・沖縄諸島に伝わる古歌謡で、それを首里王府がまとめたものが、かの「おもろそうし」(全22巻)です。

この公演に、首里クェーナ保存会の一員として井上真喜ちゃんが出るということは知っていました。そのチケットを正江先生から頂くとは、なんだか不思議。真喜ちゃんと一緒に眞境名由佳子さんも歌っていました。やっぱり沖縄は狭いということ。
楽屋でのふたり。
井上真喜ちゃんと眞境名由佳子さん
 ⇒境名由佳子さんの紹介記事

クェーナについて、ちょっと長くなりますが、大変興味深いので『沖縄大百科事典』から抜粋して引用しましょう。
「沖縄の古謡の一ジャンル。語義についてはクイナとよばれる鳥の鳴き声に由来するという説と囃子詞の<こいな>に拠るという説がある。くわいにや、こゑななどの表記がある。呪術的要素の濃い叙事的歌謡である。内容は雨乞い、五穀豊穣、航海安全、船造りなどの予祝で、対語・対句を連ねてそれぞれのことがらが理想的状態で展開するようすを謡う。そうすることによってことがらの理想的実現を祈願したのである。謡われる時間を起点にすれば、クェーナの内容は過去に起こったことを謡うのではなく、これから起こって欲しいことを、すでに起こったかのように謡う。」
歌ったクエーナは「アガリユー」でした。

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この画像は舞踊「聞得大君の舞」。
真ん中で踊っている人は玉城節子さん。1月に東京の国立劇場で撮った写真に写っていらっしゃいます。
その時の画像再掲。右から2番目の方です。
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記事はこちら…
 ⇒http://mapafter5.blog.fc2.com/blog-entry-791…

また、東江祐吉くんも、伊波普猷役で出演していました。
東江祐吉くんの紹介記事

そして特別出演の照喜名朝一先生は人間国宝。安冨祖流の歌三線の名手です。そして、なかじんさんのお師匠さんです。
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 ⇒三線を習うなかじんさんのこと

やっぱり沖縄は狭い……?

(沖縄で離婚率が高いのは、世間が狭くて、浮気を隠しておけないからだと、誰かが言ってましたっけ。真偽のほどはわかりません。)

明日朝一の飛行機で東京に帰ります。なにしろ、明日から“無伴奏デクノボー奏鳴曲”の稽古再開ですからね。
宇夫方路でした。

tag: 沖縄大百科事典  沖縄の旅_2009年9月  沖縄芸能  玉城節子  眞境名由佳子  照喜名朝一  井上真喜 

国立劇場裏話(組踊「真珠道」)

国立劇場小劇場入口。
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琉球舞踊と組踊「真珠道」。
Official_Blogとのちょっとした違いをお楽しみください。

たくさんお客さんで大盛況。
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でも、なんだかみんな向こうを向いている。誰か来るのかなあ。
「ヒゲの宮様の奥さんが来るんだよ。紀子さんがね。」
と沖縄のおじさんがにこやかに教えてくださいました。
やがて新聞記者のフラッシュの嵐、お目当ての方が、拍手の中を通り過ぎると、カメラマンたちは客席へ大移動。
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貴賓席にお出ましになるのを待っているのです。
うっとおしいから、またロビーに逃げ出そうっと。

沖縄県人会名誉会長仲田さんの奥様と宇夫方路は、奥様がまだ独身の頃からの知り合い、ご夫婦の2ショットはOfficial_Blogでご紹介しましたので、ここではもう少し大人数の方々との記念撮影を。
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皆さんは今回踊られた出演者を指導されていた方々で、沖縄舞踊界では超大物の大先生たちでいらっしゃいます。この画像は後で皆様にお送りいたします。

終演後、委託販売をお願いしているCDの件で楽屋口から劇場事務所へ。
宇夫方路が渡辺美佐子さんや歌舞伎役者さんと共演していたころ、高山正樹は、この国立劇場で大道具の仕事をしていました。それからもう10年以上、懐かしい楽屋口です。
もちろん大城先生にご挨拶するのも忘れてはいけません。
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でもお留守。紀子さまとご歓談中とのこと。
待つしかないわよね……
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菅家ゆかりさんと大城先生ご対面はOfficial_Blogにて。

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