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神田古書店街

古書がデータベースで管理されるようになってから、神田は巨大な一軒の古書店と化し、掘り出し物が殆ど消えた。以来、めっきり神田に足を運ばなくなった。
しかし、ここ数年、すっかり出力と入力のバランスが崩れていて、特に最近ブログなどを書かされて言葉を垂れ流すようになってからというもの、妙に神田が懐かしくなっていた。新刊本の活字ではダメなのだ。信用がおけない感じがしてスッと入ってこないのである。

今日の夜は銀座に用があって、その前にちょいと時間が出来たので、ほんとうに久しぶりに神田をぶらついてみることにした。
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神田に通っていた頃にも、決して立ち寄らなかった店がある。それがこの、演劇映画関連の書籍を専門に扱う矢口書店だった。戯曲やシナリオなども揃っている。
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当時芝居に嫌気がさしていて、演劇の理論書など、その背表紙が目に入ることさえ不愉快だったのである。だが、今はそんな屈折した思いはどこかに消えた。とはいえ、今日、特に意識なく最初に向かったのがこの矢口書店だったというのは、いったいどういうことだろう。

道に面した廉価本の書棚の中に見つけた一冊の演劇誌、ちねんせいしん作「人類館」が掲載された1977年の『テアトロ』2月号である。
「人類館」は、その後「沖縄文学選」というアンソロジー本で活字にされているのだが、それは当初の台本とは違って、かなりナイーブな部分が書きかえられている。沖縄の劇団創造が上演する現在の台本も、青年座の津嘉山正種さんの独り語りも、また我々が制作したCDも、全て書き換えられたものを定本にしているのだ。もはや伝説となった初演時の台本は入手困難、作者の知念正真さんの手元にもない代物、それがこのテアトロで読めるのだ。大枚200円なり。これが掘り出し物でなくてなんであろうか。

人類館については先日の沖縄語を話す会で、國吉眞正さんから頂いたお土産、我々のCD「人類館」のウチナーグチの部分を、國吉さんが正確な音で起こしてくださったテキスト、まったくありがたいことで、この資料と青年座の台本と、そして今日手に入れた「テアトロ」と、それらを比較検討するのは、きっとわくわくするほど楽しい作業だろう。その研究結果を、ブログやホームページなどで記事にすることを考えなければという条件付ではあるが。
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今日はそのほか、沖縄語の資料など数冊購入して、総額1,000円にも満たない。鞄はすこし重くなったが、気分はすっかり軽くなった。
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tag: 知念正真  人類館事件  「人類館」  うちなーぐち 

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