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全てをチューニング

チューニング。
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調絃(チンダミ)という。
最近、チェロの練習の合間に弾きたくなるのです。

チェロを始めた頃、おそれを知らない僕は、大島純くん先生にこんなことを言いました。
「フレットのない楽器ってかわいいね」
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今までギターしか弾いたことのない僕には、チェロの微妙な音程が自分の手でどうにでもなるという感じが、とっても自由で新鮮で、嬉しかったのです。そういえば小学生の時、リコーダーを強く吹いたり弱く吹いたりすると、音程が上下するのを、ひとりでひっそりと楽しんでいた時の感覚を思い出したりもしていたのでした。

すると大島先生曰く
「フレットがない、それが憎たらしいんですよ」

さて、今回はチェロを人前で弾かなければならないのです。ひっそりとひとり遊びしているわけにはいかない。舞台で、いきなり出した音が狂っていたのではまずいでしょう。だから、押さえる指の位置が分かるように、小さなシールを貼って間近に迫った舞台に備えていました。

ところが、新型インフルエンザの影響で、公演が一ヶ月延期。
いたしかたありません。ならばこの突然の災難をむしろ幸いと考えて、あらためてチェロに向かうことにしました。

そうしたら、途端にチェロに貼ったシールが気になりだした。確かにシールの位置に指を置いているのに、曲それぞれの、そのまたそれぞれの箇所によって、やけに高く感じたり、低く感じたりするようになってきたのです。
最初は、チューニングが狂っているのかなとも思ったのですが、どうもそうではないみたい。
(ちなみに、チェロのチューニングは極めて単純なのですが、しかしなぜかとっても難しいのです。)
そこで、自分の耳を信じて、思い切ってシールを剥がす事にしたのです。

それ以来、音程がとても気になって、僕の頭の中で鳴っている音を出す位置に、左手の指がどうしてもスッと行かなくて、そのことにひどく苛立ち、とってもスランプなのです。
(初心者がスランプなんて、10年早いですね。)

先日の岡山ツアー最後の日、大島氏と白石氏と奥山さんとに、この感覚の話をしてみたのです。そうしたら、彼ら音楽家たちは、何の不思議もないという顔をして、「気がついちゃったの」だって。

要するに、下降してくる時と、上昇していく時の音は違う。また、「ソ」のシャープは「ラ」のフラットより高い。あるいは、コブシみたいな装飾音ぽい半音のズレは小さめ、といことらしい。
(というふうに僕は感じているのですが、それで合ってるのかなあ?)
ピアノという楽器はそれができない。でもそれを錯覚させるように弾くのだ、それが出来るのがプロのピアニストというものなのだとか。

ああ、50歳にして、えらいところへ足を踏み入れてしまいました。
大島先生の言った「それが憎たらしい」の意味を、ほんの少しだけ理解しはじめている今日この頃なのです。
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ようやく決定稿に。これも一種のチューニング……?
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tag: デクノボー奏鳴曲  三線  大島純 

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