2009年11月21日(土)18時41分
“さかさま「執心鐘入」”で笑いました!
沖縄定番のジミーで、ランチバイキング。食べ過ぎ。

そして浦添の国立劇場“おきなわ”へ
⇒国立劇場おきなわのHPのこの日の案内ページ

正面玄関を入って、左の大劇場では大城立裕作の新作組踊“さかさま「執心鐘入」”。13時半開場、14時開演。
右の小劇場では、津嘉山正種ひとり語り“人類館”の公演。1回目が14時半開場の15時開演。2回目は18時半開場で19時開演。
両方のロビーでおきなわおーでぃおぶっくのCDを販売しています。
人類館は明日もあるので、今日は“さかさま「執心鐘入」”を観るのです。

大劇場の入口では、おきなわ堂の金城さんが、“おきなわおーでぃおぶっく”の宣伝チラシを配るお手伝いをしてくださいました。

それにしてもなんだろうこのふざけたポスターは!
ほんとうにこれが組踊りのポスターなのだろうか……

琉球の国劇である組踊りを、馬鹿にしているのではないかという声が、昨日までの沖縄の旅で、全く聞こえてこなかったというわけではありません。しかし僕としては、このポスターを見て、密かに不謹慎な(?)期待がどんどんと高まっていったのです。
果たして、この日の舞台は期待以上のものでありました。会場は爆笑の渦に包まれて…… まあ、そのあたりのことは、他の誰かがきっとどこかでお書きになるでしょう。また、あの単純な筋立て、脚本を、ここまでに仕上げた演出をはじめとするスタッフ・役者を賞賛する劇評も、あっちこっちで語られることでしょう。だからここでは、ちょいと違った視点から。
演出家や役者の創造力を掻き立てるような本を書くことは、実はなかなか難しいのです。読んだ時にはすきだらけで一見物足りなく感じられる本の方が、結果的には生き生きとした素晴らしい舞台を生み出すということはよくある話です。大城立裕という劇作家は、そこのところを熟知しているのではないかと僕は思っています。考えてみれば、歌舞伎にしろ狂言にしろ、古典の本はスキだらけ、だからこそ歌と踊りと、役者の技量を引き出すことができるのだといってもいい。必要なのは、スペクタルな背景を感じさせる筋立てなのです。
前に、執心鐘入が、いわゆる「道成寺もの」の一つであるといわれているという話しをしました。
⇒執心鐘入についての記事
その際、大和の「道成寺もの」が安珍・清姫伝説ではなく、その後日談を元に創作されているということもお話ししました。しかし「執心鐘入」は、「道成寺もの」の発端である元の物語、安珍・清姫伝説の方に似た筋で、こちらにはその後日談はありませんでした。
このことも、今回大城立裕氏が「執心鐘入」の後日談を書こうと企んだ動機のひとつではなかったのか、今度大城先生にお会いした時に伺ってみようと思うのです。
和歌などの世界に、すぐれた古い歌や詩などから、その発想や言葉を意識的に取り入れ、新しい歌を創造する「本歌取」という表現手法があります。元の作品の存在をはっきりと示し、またその作品に対するリスペクトを表明し、その上で独自の表現を加味して作るのです。しかし、この「本歌取」は簡単なものではありません。原作に対する深くて広い教養がなければ、優れた作品を生み出すことはできないのです。
その意味で、今日の“さかさま「執心鐘入」”は、まさに本歌取でした。
幕が下りても拍手は鳴り止まず、やがて手拍子に変わります。これは芝居のカーテンコールではなく、まるでコンサートのアンコールのようでありました。舞台中央に迎え入れられた大城立裕氏がカチャーシーを踊って、最後の幕となりました。
終演後のロビーは、あっちでもこっちでも満足そうな笑顔で満ち溢れていました。そのロビーで大城先生とお話しすることができました。
「最後は踊らされてしまったよ。」
そこへ見知らぬ女性が寄っていらして、大絶賛の言葉の嵐、絶対に再演しなければダメだと言って去っていかれました。
先に言った「本歌取」について、大事な要素がもう一つあります。「本歌取」は連歌の技法でもあるのですが、「本歌取」で作られた歌を受ける方にも、作り手と同じような教養が必要であるということなのです。今日の公演の大成功は、実は客席を埋めていた方々の組踊りに対する理解に支えられていたのだと思うのです。いかに「執心鐘入」という組踊りが沖縄の人たちに知られている演目であるかを、僕はあらためて知ったのです。
僕は今回の沖縄の旅で、玉城朝薫の組踊「執心鐘入」の稽古を見学させていただくことができました。もしその経験がなかったならば、はたしてこれほどに今日の“さかさま「執心鐘入」”の公演を楽しめただろうか、いささか疑問です。
⇒「執心鐘入」の稽古を見学した日の記事
でもだからといって、そのことが“さかさま「執心鐘入」”の価値を落とすことにはなりません。沖縄を本当に楽しもうとするなら、沖縄をもっともっと深く勉強してみてはいかがでしょうか。これ、絶対にお薦めです。
そして浦添の国立劇場“おきなわ”へ
⇒国立劇場おきなわのHPのこの日の案内ページ
正面玄関を入って、左の大劇場では大城立裕作の新作組踊“さかさま「執心鐘入」”。13時半開場、14時開演。
右の小劇場では、津嘉山正種ひとり語り“人類館”の公演。1回目が14時半開場の15時開演。2回目は18時半開場で19時開演。
両方のロビーでおきなわおーでぃおぶっくのCDを販売しています。
人類館は明日もあるので、今日は“さかさま「執心鐘入」”を観るのです。

大劇場の入口では、おきなわ堂の金城さんが、“おきなわおーでぃおぶっく”の宣伝チラシを配るお手伝いをしてくださいました。
それにしてもなんだろうこのふざけたポスターは!
ほんとうにこれが組踊りのポスターなのだろうか……

琉球の国劇である組踊りを、馬鹿にしているのではないかという声が、昨日までの沖縄の旅で、全く聞こえてこなかったというわけではありません。しかし僕としては、このポスターを見て、密かに不謹慎な(?)期待がどんどんと高まっていったのです。
果たして、この日の舞台は期待以上のものでありました。会場は爆笑の渦に包まれて…… まあ、そのあたりのことは、他の誰かがきっとどこかでお書きになるでしょう。また、あの単純な筋立て、脚本を、ここまでに仕上げた演出をはじめとするスタッフ・役者を賞賛する劇評も、あっちこっちで語られることでしょう。だからここでは、ちょいと違った視点から。
演出家や役者の創造力を掻き立てるような本を書くことは、実はなかなか難しいのです。読んだ時にはすきだらけで一見物足りなく感じられる本の方が、結果的には生き生きとした素晴らしい舞台を生み出すということはよくある話です。大城立裕という劇作家は、そこのところを熟知しているのではないかと僕は思っています。考えてみれば、歌舞伎にしろ狂言にしろ、古典の本はスキだらけ、だからこそ歌と踊りと、役者の技量を引き出すことができるのだといってもいい。必要なのは、スペクタルな背景を感じさせる筋立てなのです。
前に、執心鐘入が、いわゆる「道成寺もの」の一つであるといわれているという話しをしました。
⇒執心鐘入についての記事
その際、大和の「道成寺もの」が安珍・清姫伝説ではなく、その後日談を元に創作されているということもお話ししました。しかし「執心鐘入」は、「道成寺もの」の発端である元の物語、安珍・清姫伝説の方に似た筋で、こちらにはその後日談はありませんでした。
このことも、今回大城立裕氏が「執心鐘入」の後日談を書こうと企んだ動機のひとつではなかったのか、今度大城先生にお会いした時に伺ってみようと思うのです。
和歌などの世界に、すぐれた古い歌や詩などから、その発想や言葉を意識的に取り入れ、新しい歌を創造する「本歌取」という表現手法があります。元の作品の存在をはっきりと示し、またその作品に対するリスペクトを表明し、その上で独自の表現を加味して作るのです。しかし、この「本歌取」は簡単なものではありません。原作に対する深くて広い教養がなければ、優れた作品を生み出すことはできないのです。
その意味で、今日の“さかさま「執心鐘入」”は、まさに本歌取でした。
幕が下りても拍手は鳴り止まず、やがて手拍子に変わります。これは芝居のカーテンコールではなく、まるでコンサートのアンコールのようでありました。舞台中央に迎え入れられた大城立裕氏がカチャーシーを踊って、最後の幕となりました。
終演後のロビーは、あっちでもこっちでも満足そうな笑顔で満ち溢れていました。そのロビーで大城先生とお話しすることができました。
「最後は踊らされてしまったよ。」
そこへ見知らぬ女性が寄っていらして、大絶賛の言葉の嵐、絶対に再演しなければダメだと言って去っていかれました。
先に言った「本歌取」について、大事な要素がもう一つあります。「本歌取」は連歌の技法でもあるのですが、「本歌取」で作られた歌を受ける方にも、作り手と同じような教養が必要であるということなのです。今日の公演の大成功は、実は客席を埋めていた方々の組踊りに対する理解に支えられていたのだと思うのです。いかに「執心鐘入」という組踊りが沖縄の人たちに知られている演目であるかを、僕はあらためて知ったのです。
僕は今回の沖縄の旅で、玉城朝薫の組踊「執心鐘入」の稽古を見学させていただくことができました。もしその経験がなかったならば、はたしてこれほどに今日の“さかさま「執心鐘入」”の公演を楽しめただろうか、いささか疑問です。
⇒「執心鐘入」の稽古を見学した日の記事
でもだからといって、そのことが“さかさま「執心鐘入」”の価値を落とすことにはなりません。沖縄を本当に楽しもうとするなら、沖縄をもっともっと深く勉強してみてはいかがでしょうか。これ、絶対にお薦めです。
この日、国立劇場で出会った縁(ゆかり)の方々
(※あいうえお順)
東江祐吉君。
伊波正江家元とタエちゃん。
大城立裕さんご夫妻。
沖縄語を一緒に学ぶ沖縄県庁の當間さん。
親川shinakoさん。
幸喜良秀さん。
人類館を演出した菊地さん。
青年座の紫雲さん。
関りえ子さん。
瀬底正憲先生。
前出のおきなわ堂店長の金城さん。
知念正真さん。
津嘉山さんの講演会の皆さん。
津嘉山正種さん。
土のごうさん。
(※あいうえお順)
東江祐吉君。
伊波正江家元とタエちゃん。
大城立裕さんご夫妻。
沖縄語を一緒に学ぶ沖縄県庁の當間さん。
親川shinakoさん。
幸喜良秀さん。
人類館を演出した菊地さん。
青年座の紫雲さん。
関りえ子さん。
瀬底正憲先生。
前出のおきなわ堂店長の金城さん。
知念正真さん。
津嘉山さんの講演会の皆さん。
津嘉山正種さん。
土のごうさん。
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tag: 新作組踊 青年座 沖縄の旅_2009年11月 執心鐘入 大城立裕
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