2010年07月16日(金)12時16分
拝啓、智内好文さま【天空企画「ウチナー・パワー~沖縄 回帰と再生」】《3》
拝啓、智内好文さま。
いよいよ「ウチナー・パワー〜沖縄 回帰と再生」が出版されましたね。おめでとうございます。早速お送りいただき、ありがとうございました。すぐにも読んで、宣伝をと意気込んだのですが、地味ながらその内容の重さに、しばしば立ち止まって沈思黙考、申し訳なく思っています。
今日から沖縄へ行ってきます。山猫合奏団の沖縄公演ツアーのためです。山猫合奏団の公演を沖縄で実現させる、それは、大げさに言えば僕の夢でした。山猫合奏団の仲間や、山猫合奏団を応援してくださる方々は、僕の最も大切にしなければならない人たちですが、そのみんなに、僕が30年間「沖縄」の何に拘ってきたのか、その一端を知ってもらえる機会がやっと訪れたのです。同時に、沖縄を通じて知り合った方々には、僕が沖縄とは関係の無いことにも一生懸命に関わっている人間だということを知ってもらえるのです。「沖縄問題」が全ての日本人にとっての課題であるならば、今回のような機会こそがとても大切なのだと、僕は思っているのです。M.A.P.after5なるブログは、このためにこそあったのかもしれません。
にもかかわらず、何故かとても憂鬱なのです。その原因を説明するのは、なかなか困難なのですが、僕は周期的に、沖縄に関わっていることがとても嫌になる、ちょうどその時期にあたってしまったようで、でもこんなことを言うと、沖縄に関する優れた仕事を継続的に続けてこられた智内さんから、きっと叱られるに違いありませんね。
沖縄へ向かう機内で、東京から持ってきた唯一の本「ウチナー・パワー」をツラツラと読んでいます。

沖縄が「沖縄」に「回帰」し、そして「再生」しようと声を上げれば上げるほど、どうやら僕の憂鬱は募っていくようなのです。
島尾伸三氏がプロローグを書いています。「夢幻琉球」という表題で。
「奄美大島で小・中学校を過ごした1950年代から60年代なかばまで、沖縄は輝いていました。沖縄にはアメリカの珍しいものや便利なものが何でもあって、道にあふれるほどいろんな自動車が走っていて、毎日たくさんの飛行機が町や村の上を飛んでいるというのです。(中略)その憧れは、1972年の沖縄への復帰後数年もしないうちに、奄美の人間にはすっかり色あせたものになってしまいました。その理由は(中略)アメリカ軍からの横流しや戦利品と呼ばれていた盗品を日本へ密輸して大儲けできる魅力が、失われたからです。」
なんという逆説でしょう。僕は、この島尾氏の文章に拮抗できる言葉を、たったひとつとして持ち合わせていないことに気づくのみです。
その代わりといっていいのかどうか、僕は、先日島尾伸三氏から聞いた話を、思い切って公開してしまおうと思ったのでした。
⇒http://mapafter5.blog.fc2.com/blog…
また、例えば新垣誠氏はこんなことを書いています。
「(前略)沖縄の独自性を訴え、ヤマトとの差異化を図った言説が一世を風靡してから久しい。(中略)近代国家に取り込まれて以来、沖縄は常に苦渋をなめてきた。国家の矛盾と日常をともにすればするほど、帰属意識は薄れ、独自のアイデンティティーを問い直す作業が始まることは自然なのかもしれない。」
「しかし、また、沖縄の独自性を構築する作業は、沖縄をエキゾチックな文化的他者として陳列・観察しようとする殖民者やオリエンタリストによって強奪・利用されてきた側面をもつ。」
「他者の理解とは、多くの矛盾と困難をはらんだプロセスだ。他者理解など、そもそも不可能なのかもしれない。唯一、底知れぬ忍耐と謙虚な姿勢が生み出す共感力のみが、他者へ近づく道なのかもしれない。ましてや、自己の世界観に他者を幽閉して展示物のように眺め、自己を定義する欲求によって他者を『理解』するプロセスは、暴力以外の何物でもない」
そんなこと、分かり過ぎるほど分かっていたはずなのです。それなのに、僕はあらためて自問しています。僕は、沖縄の何を理解し、何を伝えようとしているのだろうかと。そして再び沈思黙考するのです。
「ウチナー・パワー」をそっと閉じて機内誌を手に取りました。しかしそこにも観光客に向けた沖縄特集が。

沖縄は、逃れがたく僕のそばにあり、そしてどの記事にも、僕は「違う、違う」と呟いているのでした。
どんなに憂鬱でも、これから10日間、僕はいつもよりもずっと注意深く、沖縄を見てこようと思っています。もしかすると、今回の報告は、いつもにも増して、遅筆、かつ、時には重たいものになるかもしれません。でも、どうか山猫合奏団の記事がお目当ての皆様方にも、すこしばかり辛抱して、ぜひともお読みいただきたいと願っているのです。
智内好文さま。東京にもどったら、お会いしたいと思っています。どんな土産話ができるのか、定かではありませんが。
いよいよ「ウチナー・パワー〜沖縄 回帰と再生」が出版されましたね。おめでとうございます。早速お送りいただき、ありがとうございました。すぐにも読んで、宣伝をと意気込んだのですが、地味ながらその内容の重さに、しばしば立ち止まって沈思黙考、申し訳なく思っています。
今日から沖縄へ行ってきます。山猫合奏団の沖縄公演ツアーのためです。山猫合奏団の公演を沖縄で実現させる、それは、大げさに言えば僕の夢でした。山猫合奏団の仲間や、山猫合奏団を応援してくださる方々は、僕の最も大切にしなければならない人たちですが、そのみんなに、僕が30年間「沖縄」の何に拘ってきたのか、その一端を知ってもらえる機会がやっと訪れたのです。同時に、沖縄を通じて知り合った方々には、僕が沖縄とは関係の無いことにも一生懸命に関わっている人間だということを知ってもらえるのです。「沖縄問題」が全ての日本人にとっての課題であるならば、今回のような機会こそがとても大切なのだと、僕は思っているのです。M.A.P.after5なるブログは、このためにこそあったのかもしれません。
にもかかわらず、何故かとても憂鬱なのです。その原因を説明するのは、なかなか困難なのですが、僕は周期的に、沖縄に関わっていることがとても嫌になる、ちょうどその時期にあたってしまったようで、でもこんなことを言うと、沖縄に関する優れた仕事を継続的に続けてこられた智内さんから、きっと叱られるに違いありませんね。
沖縄へ向かう機内で、東京から持ってきた唯一の本「ウチナー・パワー」をツラツラと読んでいます。
沖縄が「沖縄」に「回帰」し、そして「再生」しようと声を上げれば上げるほど、どうやら僕の憂鬱は募っていくようなのです。
島尾伸三氏がプロローグを書いています。「夢幻琉球」という表題で。
「奄美大島で小・中学校を過ごした1950年代から60年代なかばまで、沖縄は輝いていました。沖縄にはアメリカの珍しいものや便利なものが何でもあって、道にあふれるほどいろんな自動車が走っていて、毎日たくさんの飛行機が町や村の上を飛んでいるというのです。(中略)その憧れは、1972年の沖縄への復帰後数年もしないうちに、奄美の人間にはすっかり色あせたものになってしまいました。その理由は(中略)アメリカ軍からの横流しや戦利品と呼ばれていた盗品を日本へ密輸して大儲けできる魅力が、失われたからです。」
なんという逆説でしょう。僕は、この島尾氏の文章に拮抗できる言葉を、たったひとつとして持ち合わせていないことに気づくのみです。
その代わりといっていいのかどうか、僕は、先日島尾伸三氏から聞いた話を、思い切って公開してしまおうと思ったのでした。
⇒http://mapafter5.blog.fc2.com/blog…
また、例えば新垣誠氏はこんなことを書いています。
「(前略)沖縄の独自性を訴え、ヤマトとの差異化を図った言説が一世を風靡してから久しい。(中略)近代国家に取り込まれて以来、沖縄は常に苦渋をなめてきた。国家の矛盾と日常をともにすればするほど、帰属意識は薄れ、独自のアイデンティティーを問い直す作業が始まることは自然なのかもしれない。」
「しかし、また、沖縄の独自性を構築する作業は、沖縄をエキゾチックな文化的他者として陳列・観察しようとする殖民者やオリエンタリストによって強奪・利用されてきた側面をもつ。」
「他者の理解とは、多くの矛盾と困難をはらんだプロセスだ。他者理解など、そもそも不可能なのかもしれない。唯一、底知れぬ忍耐と謙虚な姿勢が生み出す共感力のみが、他者へ近づく道なのかもしれない。ましてや、自己の世界観に他者を幽閉して展示物のように眺め、自己を定義する欲求によって他者を『理解』するプロセスは、暴力以外の何物でもない」
そんなこと、分かり過ぎるほど分かっていたはずなのです。それなのに、僕はあらためて自問しています。僕は、沖縄の何を理解し、何を伝えようとしているのだろうかと。そして再び沈思黙考するのです。
「ウチナー・パワー」をそっと閉じて機内誌を手に取りました。しかしそこにも観光客に向けた沖縄特集が。
沖縄は、逃れがたく僕のそばにあり、そしてどの記事にも、僕は「違う、違う」と呟いているのでした。
どんなに憂鬱でも、これから10日間、僕はいつもよりもずっと注意深く、沖縄を見てこようと思っています。もしかすると、今回の報告は、いつもにも増して、遅筆、かつ、時には重たいものになるかもしれません。でも、どうか山猫合奏団の記事がお目当ての皆様方にも、すこしばかり辛抱して、ぜひともお読みいただきたいと願っているのです。
智内好文さま。東京にもどったら、お会いしたいと思っています。どんな土産話ができるのか、定かではありませんが。
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