2010年10月16日(土)23時45分
高山正樹「紅い手」を読む【怪奇幻想朗読百物語 第八夜】
先日告知した朗読会、午後5時開演。その1時間ほど前に、会場入り。立川駅から歩いて12分。Cafeばくだん畑。

怪奇幻想朗読百物語 第八夜

僕は3度目になる。
⇒1度目:2009年2月20日 遠藤周作「蜘蛛」
⇒2度目:同年3月14日 夏目漱石「蛇(永日小品より)」
そして本日の演目は……
●矢内のり子「悋気の火の玉」
●河崎卓也「もう半分」
●高山正樹「紅い手(夢丸新江戸噺し)」
開場間際、矢内さんと河崎さんが最後の確認をしている。

河崎さんの台本を、ちょっと見せていただいた。

「おまえ」→「おめえ」
「だいいち」→「でえいち」
これ、沖縄語とおんなじ音韻変化である。ウチナーグチの音韻講座を丹念に読んでくださっている方なら(そんな方がいらっしゃるのかどうか)、聞覚えのある話だろう。
こうした落語の言葉(江戸弁)が、台本にどう書かれているのかが知りたかったのだ。なるほど、ルビを振っているんだな。
僕はまだどう読むか決めかねている。
【11月29日にようやく追記】
先にやられたお二人の朗読(?)を聞きながら考えた。「紅い手」は派手な噺ではない。おかしな噺でもない。だから結局、普通に静かに読むしかないと思っていたのだが、急遽それはやめることにした。僕は会場をできる限り明るくしてもらった。そして……
行きつけの飲み屋、開店前の仕込みの時間。時間を持て余した落語家が少しばかり早く店にきてしまった。そこで新作落語の練習を始める。奥で仕込みをしているだろう女将さんに聞こえるような声で。
僕は先日お亡くなりになったばくだん畑の奥様が、この会場のどこかで聞いていてくださるというイメージを、その設定にダブらせた。
落語の内容は、街道沿いの居酒屋に立ち寄った男が、その店の女将さんに、なぜ江戸を逃げてきたのかを語るという形で進んでいく。実際の落語なら、落語の中の「地の文」は、時に主人公の男性が話しているようでもあり、あるところは落語家の言葉として書かれていたり……、しかしこの場では、稽古している落語家が読んでいる台本に書かれた単なる地の文なのである。
こんな複雑な構造にして、それを枕で喋って、落語を朗読するという困難さを煙に巻くことにした。
果たしてそれは成功したのかどうか。お亡くなりになった奥様に、楽しんでもらえる出来栄えだったのかどうか。
僕は、この日のことを書きあぐねていたのだが、観に来ていた山猫合奏団の楠定憲氏が翌日、なぜか「宮澤賢治考」で僕の朗読をネタにしてトットと書いた。
⇒宮澤賢治考「読むも語るも」
その記事に、やっぱり観てくれた白石准氏と河崎卓也氏がコメントをつけてくれたが、僕は未だにそれには何も答えていない。
ありがたいことに、文芸評論家の大友浩さんがいらしてくださった。そして、10月21日のご自分のブログで取り上げてくださった。過分な評価に恐縮している。
⇒芸の不思議、人の不思議「『紅い手』の朗読」
終演後、少しだけだが大友さんとお話することができた。
「落語は、熊さんだろうが大家さんだろうが、その言葉の出所はいつも落語家本人なのです。だから、つっかかろうが言い間違えようが、傷にならない。話す度に違う芸なのです。」
これを聞いて僕は考えた。今も考えている。
実はこの記事だが、なんとか三笑亭夢丸with東京奏楽舎の深川江戸資料館公演の前にアップしたかった。しかしそれができなかった理由がここにある。ひとつの音符の間違いが傷になるクラシック音楽と、ミスが傷にならない即興性の強い落語という芸、それを対等に合体させることは、論理的に不可能なことなのではないか。こんなネガティブなことを、プロデューサーが本番前に書いてはいけない。せめて本番を見極めたうえで書こうと思ったのだ。
だが結局、それについてはいまだ語れない。そして、考え続けている。
先に出て、立川の駅近くの居酒屋で待っていてくれた楠氏と白石氏。

何を話していたのか、今となっては思い出せない…、ということにしておこう。
怪奇幻想朗読百物語 第八夜
僕は3度目になる。
⇒1度目:2009年2月20日 遠藤周作「蜘蛛」
⇒2度目:同年3月14日 夏目漱石「蛇(永日小品より)」
そして本日の演目は……
●矢内のり子「悋気の火の玉」
●河崎卓也「もう半分」
●高山正樹「紅い手(夢丸新江戸噺し)」
開場間際、矢内さんと河崎さんが最後の確認をしている。
河崎さんの台本を、ちょっと見せていただいた。
「おまえ」→「おめえ」
「だいいち」→「でえいち」
これ、沖縄語とおんなじ音韻変化である。ウチナーグチの音韻講座を丹念に読んでくださっている方なら(そんな方がいらっしゃるのかどうか)、聞覚えのある話だろう。
こうした落語の言葉(江戸弁)が、台本にどう書かれているのかが知りたかったのだ。なるほど、ルビを振っているんだな。
僕はまだどう読むか決めかねている。
【11月29日にようやく追記】
先にやられたお二人の朗読(?)を聞きながら考えた。「紅い手」は派手な噺ではない。おかしな噺でもない。だから結局、普通に静かに読むしかないと思っていたのだが、急遽それはやめることにした。僕は会場をできる限り明るくしてもらった。そして……
行きつけの飲み屋、開店前の仕込みの時間。時間を持て余した落語家が少しばかり早く店にきてしまった。そこで新作落語の練習を始める。奥で仕込みをしているだろう女将さんに聞こえるような声で。
僕は先日お亡くなりになったばくだん畑の奥様が、この会場のどこかで聞いていてくださるというイメージを、その設定にダブらせた。
落語の内容は、街道沿いの居酒屋に立ち寄った男が、その店の女将さんに、なぜ江戸を逃げてきたのかを語るという形で進んでいく。実際の落語なら、落語の中の「地の文」は、時に主人公の男性が話しているようでもあり、あるところは落語家の言葉として書かれていたり……、しかしこの場では、稽古している落語家が読んでいる台本に書かれた単なる地の文なのである。
こんな複雑な構造にして、それを枕で喋って、落語を朗読するという困難さを煙に巻くことにした。
果たしてそれは成功したのかどうか。お亡くなりになった奥様に、楽しんでもらえる出来栄えだったのかどうか。
僕は、この日のことを書きあぐねていたのだが、観に来ていた山猫合奏団の楠定憲氏が翌日、なぜか「宮澤賢治考」で僕の朗読をネタにしてトットと書いた。
⇒宮澤賢治考「読むも語るも」
その記事に、やっぱり観てくれた白石准氏と河崎卓也氏がコメントをつけてくれたが、僕は未だにそれには何も答えていない。
ありがたいことに、文芸評論家の大友浩さんがいらしてくださった。そして、10月21日のご自分のブログで取り上げてくださった。過分な評価に恐縮している。
⇒芸の不思議、人の不思議「『紅い手』の朗読」
終演後、少しだけだが大友さんとお話することができた。
「落語は、熊さんだろうが大家さんだろうが、その言葉の出所はいつも落語家本人なのです。だから、つっかかろうが言い間違えようが、傷にならない。話す度に違う芸なのです。」
これを聞いて僕は考えた。今も考えている。
実はこの記事だが、なんとか三笑亭夢丸with東京奏楽舎の深川江戸資料館公演の前にアップしたかった。しかしそれができなかった理由がここにある。ひとつの音符の間違いが傷になるクラシック音楽と、ミスが傷にならない即興性の強い落語という芸、それを対等に合体させることは、論理的に不可能なことなのではないか。こんなネガティブなことを、プロデューサーが本番前に書いてはいけない。せめて本番を見極めたうえで書こうと思ったのだ。
だが結局、それについてはいまだ語れない。そして、考え続けている。
先に出て、立川の駅近くの居酒屋で待っていてくれた楠氏と白石氏。
何を話していたのか、今となっては思い出せない…、ということにしておこう。
【枕の一部を除き、全篇をyouTubeにアップしちゃいました】
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