2010年10月28日(木)23時50分
出ないなら出る練習をする
この日、中真水才から8月30日の画像が届いた。
父が息子の道を開く。

応援に答える中真光石。

そして……
左ジャブ。

ジャブかな……

ジャブ。

接近したいのは阪東ヒーロー。

それをさせない中真光石の左ジャブ。

ジャブ。

僕はボクシングを知らない。ここまでの画像が、ホントに全部ジャブなのかどうかも定かではない。ただ、序盤は確かに光石の左が的確に阪東選手をとらえているように見えた。

兄貴の水才は、きっとこの試合で数百回シャッターを切ったのだろう。でも、彼が選んで送ってきた画像の、はじめの方は左ばかりだった。
浅野さんは中真光石を評して、すごくいい右を持っているのに、彼の右は相手から見えない角度で出てくるパンチで、打てば当たるはずなのだから、もっと右を出せばいいのにと言っていたことがある。
試合から2週間たった酒菜で、スーさんに、こんなハナシを聞いた。
デビューした当初の中真光石は強かった。連戦連勝。プロ10戦目の相手も楽勝のはずだった。序盤から軽快に攻めた。だが、そこに落とし穴があった。中真光石の右に、相手が出した闇雲パンチがカウンターとなって光石をとらえた。出会い頭だった。このたった一発のパンチで光石はリングに沈み、立ち上がることはできなかった。そして担架で運ばれた。
以来、光石の試合にどこかそれまでのような勢いがなくなったというのである。右が出なくなった。もしかすると、初めて負けたその試合の、受けたパンチがトラウマになっているのではないか。右を出す時に、一瞬躊躇する。そして打つべき右のタイミングを逃すのではないか。
何度も言うが、僕はボクシングを知らない。だからこのスーさんの分析が正しいのかどうかもわからない。でも、そんなことがあってもおかしくはないと思った。
観客席から、「手数だ!打て!」という声が光石にかかる。出ない右に、声がかかる。
父は、息子にどんなアドバイスを与えるのだろう。

左から……

右へ。

浅野さんの言ったとおり、打てば当たるのだ。

だから打てばいい。

打て!

だが、前に出ていたのはいつも阪東ヒーローだったし、手数も阪東ヒーローのほうが上だった。
なんとしても浅野さんに聞いてみたかった。トラウマで出なくなった右について。
試合から2ヶ月後、やっと浅野さんに聞くことができた。
「ただ練習することだけ。」
リングの上は殺すか殺されるかの世界。トラウマだかなんだか知らないが、右が出ないなら右を出す練習をする。ただそれだけのこと。
そうなんだよな、それがプロなんだよなと、僕はすっかり納得したのだった。
兄貴の水才が言った。後楽園ホールで、試合に負けて、それでもあんなにたくさんの人が残っていてくれる、そんな幸せな選手なんて滅多にいない。負ければ終わりの世界なのに、親父がジムをやっているから、次の試合も何とか組んでくれる。練習環境だってそうだ。他の選手はもっともっと厳しい状況の中で必死にボクシングを続けている。試合に負けて、見送ってくれる人なんて誰もいない。たった一人ぼっちで電車に乗って帰っていくボクサーがたくさんいるのだと。
「弟は恵まれ過ぎているのかもしれません。それが一番の問題なのかもしれない。僕が言ってどうなることでもないけれど」
ほんの一瞬の勝負を分けるもの。

きっと舞台だってそうなのだと、そこに気が付かなければ碌な表現などできはしないのだと、僕は思い知らされている。ただ舞台は、負けた試合を負けちゃあいないというふうに、自分自身を騙しておけるものらしいのだ。
もっと困難なのは、負けた理由を見つけること。その難しさについては、どうやら芝居もボクシングも同じらしい。
ここにはもう、沖縄のジムだとか東京の大きなジムだとか、そんな区別もない。
⇒関連記事を読む
【追伸】
「中真光石」のカテゴリを作ることにしました。「沖縄のこと」のサブカテゴリ。まだまだボクシングを、沖縄のジムで頑張ることを信じて。因みに兄貴のタグもあります。
父が息子の道を開く。

応援に答える中真光石。

そして……
左ジャブ。

ジャブかな……

ジャブ。

接近したいのは阪東ヒーロー。

それをさせない中真光石の左ジャブ。

ジャブ。

僕はボクシングを知らない。ここまでの画像が、ホントに全部ジャブなのかどうかも定かではない。ただ、序盤は確かに光石の左が的確に阪東選手をとらえているように見えた。

兄貴の水才は、きっとこの試合で数百回シャッターを切ったのだろう。でも、彼が選んで送ってきた画像の、はじめの方は左ばかりだった。
浅野さんは中真光石を評して、すごくいい右を持っているのに、彼の右は相手から見えない角度で出てくるパンチで、打てば当たるはずなのだから、もっと右を出せばいいのにと言っていたことがある。
試合から2週間たった酒菜で、スーさんに、こんなハナシを聞いた。
デビューした当初の中真光石は強かった。連戦連勝。プロ10戦目の相手も楽勝のはずだった。序盤から軽快に攻めた。だが、そこに落とし穴があった。中真光石の右に、相手が出した闇雲パンチがカウンターとなって光石をとらえた。出会い頭だった。このたった一発のパンチで光石はリングに沈み、立ち上がることはできなかった。そして担架で運ばれた。
以来、光石の試合にどこかそれまでのような勢いがなくなったというのである。右が出なくなった。もしかすると、初めて負けたその試合の、受けたパンチがトラウマになっているのではないか。右を出す時に、一瞬躊躇する。そして打つべき右のタイミングを逃すのではないか。
何度も言うが、僕はボクシングを知らない。だからこのスーさんの分析が正しいのかどうかもわからない。でも、そんなことがあってもおかしくはないと思った。
観客席から、「手数だ!打て!」という声が光石にかかる。出ない右に、声がかかる。
父は、息子にどんなアドバイスを与えるのだろう。

左から……

右へ。

浅野さんの言ったとおり、打てば当たるのだ。

だから打てばいい。

打て!

だが、前に出ていたのはいつも阪東ヒーローだったし、手数も阪東ヒーローのほうが上だった。
なんとしても浅野さんに聞いてみたかった。トラウマで出なくなった右について。
試合から2ヶ月後、やっと浅野さんに聞くことができた。
「ただ練習することだけ。」
リングの上は殺すか殺されるかの世界。トラウマだかなんだか知らないが、右が出ないなら右を出す練習をする。ただそれだけのこと。
そうなんだよな、それがプロなんだよなと、僕はすっかり納得したのだった。
兄貴の水才が言った。後楽園ホールで、試合に負けて、それでもあんなにたくさんの人が残っていてくれる、そんな幸せな選手なんて滅多にいない。負ければ終わりの世界なのに、親父がジムをやっているから、次の試合も何とか組んでくれる。練習環境だってそうだ。他の選手はもっともっと厳しい状況の中で必死にボクシングを続けている。試合に負けて、見送ってくれる人なんて誰もいない。たった一人ぼっちで電車に乗って帰っていくボクサーがたくさんいるのだと。
「弟は恵まれ過ぎているのかもしれません。それが一番の問題なのかもしれない。僕が言ってどうなることでもないけれど」
ほんの一瞬の勝負を分けるもの。

きっと舞台だってそうなのだと、そこに気が付かなければ碌な表現などできはしないのだと、僕は思い知らされている。ただ舞台は、負けた試合を負けちゃあいないというふうに、自分自身を騙しておけるものらしいのだ。
もっと困難なのは、負けた理由を見つけること。その難しさについては、どうやら芝居もボクシングも同じらしい。
ここにはもう、沖縄のジムだとか東京の大きなジムだとか、そんな区別もない。
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