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今年も高江に行ってきた《少し言い過ぎることを許してください》

《8月3日(水)-2》
名護での本番は夜である。少し時間があるから、今年も、宇夫方女史と高江まで行ってみることにした。日本は震災でとてつもないことになって、みんなそちらにばかり気を取られているが、高江はもっとずっと前から大変なことになっているのだ。

途中、再び辺野古の海を通る。しっかりと写しておこうと車を停めた。
大浦湾は近づく台風の影響でざわめいている。
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しかし、その波が砂浜までやってくることはない。
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波は沖合いのリーフに当って砕け、轟音は風の音にかき消されてここまでは届かず、白波のスローモーションを、まるで別世界の出来事のように眺めるのみである。
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海は、台風の大きさを知らせているはずなのだが、この島のことを知らぬ旅人には、その警告はなかなか理解できない。
 ⇒寄せる波が破壊し返す波が奪い去る

一年ぶりの高江。是非とも去年の記事も読んでいただきたい。
 ⇒高江のこと知っていますか?【米軍海兵隊の北部訓練場】
 ⇒ヤンバルの高江は自然の宝庫《キノボリトカゲ・ノグチゲラ》
 ⇒高江で見つけた看板の表と裏【マングース対策事業で仕掛けたられた罠】
 ⇒危機一髪!アメリカ海兵隊から逃げる

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「お久しぶりです」
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でも、なんだか今日は騒がしい。たくさんの車が並んでいる。
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なんでも、車でバリケードを張っているのだという。
防衛局の職員がウロウロしている。
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彼らはこうして車をチェックし、場合によってはナンバーを撮影して、あとで駐車違反などで摘発するのだと聞いた。
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「やり方が陰湿だよ」

突然今日、ヘリパッド建設工事の準備調査のために現われたのだという。
「もうすぐ台風が来るんですよ。あんたたちがいると、台風の準備しなきゃいけないのに、それができないんですよ。なんで今日来るか。帰ってください!」
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なるほど、そういうことか。今年の旧正月にもそんなことがあったっけ。沖縄の人たちにとって、旧の正月がどういうものか、知った上でのこと。新正月なら日本中から批判されるが、旧正月では多くの日本人は忙しく働いていてニュースにはなりにくい。台風だって、内地のそれとはまったく威力が違う。台風に備えておかないとどういうことになるか、下手すれば命にだって関わるというのに。
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彼らは、本当に日本人なのだろうか。というより、これが日本人の正体なのかもしれない。
しかし、そういう俺は、いったい誰なのだろう。
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今年も夢蘭(むーらん)でお昼を食べることにした。台風は近づいてきているけれど、雨は降りそうもない。でもたとえ雨が降ったとしても、きっともう屋上席にはおじさん手作りの屋根が完成しているはずだ。

あら?
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おや?
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「おじさん、屋根は?」
実はおじさん、ちゃんと屋根を作った。すっごく頑丈なやつ。ところがこの前のでっかい台風の時、それが羽みたいになっちゃって、あんまり頑丈に作っちゃったもんだから、家ごと飛びそうになって、えらくおっかない思いをしたんだそうで。台風が去った後、すぐに取り壊したのだとか。
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「そういうことなわけよ。」
「ふーん」
それにしてもこのおじさん、新城亘先生にソックリじゃありませんか。これから夢蘭のおじさんのことを高江の亘しゃんしぇいと呼ぶことに決めたっと。

お食事は今回もここで。
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今年もパインを頂いた。サービス。
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「ヘリコプター来るの?」
「最近多くなった。真夜中、すごい音でさ。真っ暗だろ。ヘリコプターは明かり点けてないから。家の屋根にライトつけてるんだけど、突然その明かりの中に真っ黒いのが現れるわけさ。恐ろしいよ」
「真夜中、ひでえなあ」
「もう慣れた」

「高江のヘリパッド工事、賛成している人もいるんでしょ」
「農協から金借りてたり、補助金もらってたりするとね、なんとなく反対って言えない」
「みんな反対なんですか」
「基地があったほうがいいなんて誰も思ってないんじゃないかね」
「賛成派の人たちと話したりしないんですか」
「しないさ。でも向こうの集まりに酒もっていったりする、基地の話しなんか何にもしないで一緒に酒飲んでくるだけさ。でもそうしているうちによ、ポロっと本音が出てくるわけさ、ホントは基地なんかいらないってさ」

世界がややこしくなければ、基地など無いほうがいいに決まっている。その至極当たり前なことが、世界がややこしいから、基地のハナシは政談になる。
もともとこのM.A.P.after5なるブログは会社のブログである。政治のハナシはしない、というのが基本方針。それは今も変わってはいない。
ただ、沖縄の基地のことは、日本人の誰もが考えなければならない問題で、それは政治などという表層的なことではないと、僕は確信しているのである。

キジムナーフェスタ開催期間中、どこの会場でも、スタッフの間でも、閉会式においても、沖縄の基地のハナシを持ち出す人は誰もいなかった。もちろん“コザ物語”のように基地に題材を取った作品もあるにはあったが、それは例えば、山猫合奏団が宮沢賢治を作品の材料にしていることと同じレベルのことだ見做される。それはそれでかまわない、というか、それは正しいと思っている。世界の舞台芸術の祭典を、ただ沖縄市という街で開いたというだけのこと、そこに基地問題を殊更に持ち込む必要は全くない。山猫合奏団の僕も、そのスタンスに同意する。

しかしながら株式会社M.A.P.は、様々な沖縄関連の事業を展開している会社である。その代表としては、たとえ沖縄とは無関係な山猫合奏団の公演ツアーとはいえ、ここ沖縄にやってきて、「全ての日本人が考えるべき沖縄の基地のこと」に、一切触れずに帰ることはできないと思っているのである。

何度でも言うが、このことは山猫合奏団とは全く関係のないことである。また、普天間や辺野古をどうすべきかについて、たとえ僕の意見がどうであれ、M.A.P.after5で、つまり会社として何かを言うことも避けたいと思う。ただ見たこと聞いたことの事実だけをご紹介するのみである。それでも、その「事実」の切り出し方が、ある方向に傾いてしまっているということがあるかもしれない。それについてそうではないと確信を持って反論する自信はない。気になったことしか目に入らず聞こえてこないということは十分にある得ることだろう。しかし、決して意図的に事実を選り分けるようなことはしていないと、申し上げておきたいと思うのだ。

もうひとつ、沖縄の基地が福島と決定的に違うことがひとつある。原発はそこに住む人々が拒否すればやってくることはなかった。(そうではないと主張する人たちがいることも承知している。が、沖縄とはやはり違うと思う。)だが沖縄の基地は、どんなに沖縄の人々が反対だと言っても、日本人から押し付けられてきたのである。沖縄県人もまた日本人ではないかという者には、沖縄の歴史を学ぶべきだと言おう。その歴史を知ってもなおそう主張する者どもとは、僕は決別しても構わないと、あの3.11以来公言することにした。
「沖縄の基地についてとてもあれこれ言えないよ」という一見良心的な日本人たち。しかし、沖縄県に対して強権を発動し続ける政府を選んできた責任は、そういう君たちにもあるのだ。そういう君たちにこそ、沖縄の人たちは苛立っている。その「君たち」の中に、僕も含まれている。

何度でも言う。「オキナワ」は「政治」ではない。日本という国に生きる人間ならば決して避けてはならない「何か」であると、せめて何も出来ない僕は言い続けようと思っている。
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「また、必ず来ます」
「ありがとーねー」
帰り道、こんな看板を見つけた。
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沖縄やんばる海水揚水発電所。去年は全く気がつかなかった。見ていたのかもしれない。でも気に留めることなどなかった。3.11まで、エネルギーという重大かつ緊急の課題が、人類の眼前に横たわっているということにあまりにも無頓着だった。

揚水発電所とは夜間電力需要の少ない時に水を高い場所へ汲み上げておいて、その水を昼間落下させて発電しようというもの。発電施設いうより蓄電施設と言うべきものなのである。
普通は川の上下にダムを二つ作って揚水発電所を建設する。ここ高江にある揚水発電所は海水を使う世界唯一の揚水発電所らしい。作るダムは上だけ、下のダムは広大な海である。

しかし、揚水発電所が蓄電目的である限り、10のエネルギーを作るために、倍の20近い電力を使わなければならないのだ。一般家庭の電力料金を節約しようというような話をしているのではない。水を汲み上げるために必要な電力はどこから来るのか。もし枯渇寸前の化石エネルギーが必要だとしたら、膨大な建設費(もちろんエネルギーもだが)を使って建設すべき施設なのだろうか。

そんな発電所が、ひっそりとここ高江にある。なぜ高江なのか。

去年も撮影した入り江。
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色も波も違う。

さあ戻ろう。なかなか変わらない気分だが、なんとか切り替えて。
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tag: 高江  沖縄の呑食処.夢蘭  辺野古 

Comment

No:1205|
高江がピンチらしい。
【琉球新報】高江ヘリパッド建設、工事再開も膠着、防衛局と住民にらみ合い
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-184099-storytopic-3.html
すいません。コメントにURLを入力してもリンクしなくなってしまいました。携帯端末だと、コピペも大変だよねえ……
No:1206|
11月17日午前10時過ぎのツイッター。
「作業者、防衛局、近づいています。警察も介入し、車両を移動させられる可能性もあります。人間による、非暴力直接行動が必要です。高江に来てください」
10時20分。
防衛局の重機が高江に到着したという情報あり。
No:1207|
お久しぶりです。
陽太です。
Facebookの投稿を見て
「あ、沖縄行って来たんだ。良いなぁ」
位にしか思っていませんでした。
反省しています。
今、失言問題などで沖縄の報道をよく耳にしますが、一方でこんな事があるなんて知りませんでした。
防衛局の人たちにとってみれば、職務の一環で言い分もあるのかもしれませんが、やはり悲しいです。
貴重な投稿ありがとうございます。
No:1208|
板垣陽太くん、ようこそ。
実はこういうコメントが一番嬉しいのです。
このブログには「沖縄の基地・戦争のこと」というサブカテゴリがあります。是非一度読んでみてください。
http://lince.jp/hito/okinawamap/kiti/
またコメント、待ってます。

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