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昨日の夜、タクシーに乗った。ラジオからスターダストが流れていた。
「運転手さん、今、ちょうど月食のいいところだよ」
「そうらしいねえ、さっきラジオで言ってた」
「見ないの」
「かき入れ時だからね。お客さん降ろしてすぐ駅に戻ると、必ずまた別のお客さんが待ってる」
「そうか、次は何年も先らしい。それにこんなに空が綺麗なのは珍しい」

目的地についてお金を払おうとしたら、初老の運転手さんは運転席のドアを開けた。
「やっぱり見ておこうかな、今度はきっと見れないから」
「お金お金」
「ああ、そこ置いといて」

運転手さんは道の反対側に行って、空を見上げて携帯を構えた。
僕も追いかけて、付き合って月を見た。

「だめだなあ、やっぱり上手く写らないなあ」

ふと道の向こう側を見ると、無人のタクシーがソロソロと動き出した。
「運転手さん!大変だ」
「あらら、サイドブレーキ忘れてた」

運転手さんは楽しそうに車に飛んでいった。そのまま業務に戻るのかと思いきや、やっぱり車から降りて、また道を渡って戻ってきた。
「いいの、かき入れ時なのに」
「いいさ、いい月だから。月、やっぱり上手く写らないけどさ」
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tag: 喜多見_居酒屋.ふくや 

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