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自衛隊からの手紙の法的根拠考察(1)

集団的自衛権が閣議決定された翌日に自衛隊募集の葉書が届いたというような情報が、ずいぶんと目についた。本当に集団的自衛権の閣議決定と自衛隊募集の葉書には関連があるのかどうか、少なくとも、自衛隊募集の葉書が送られてきたというのは毎年聞く話である。ネットで検索すれば、日本中各地の関連情報が拾える。
これまで既に二度紹介したものだが、再度参考にする。
【千葉市民の声:個人情報保護について】
  ⇒ http://t.co/kOYy99tPql
千葉市のホームページ、市民からの質問に答えるQ&A形式の記事で、昨年2013年9月30日にアップされたものである。この御時世、いつ削除されてしまうかも分からないので、リンク先の内容をまとめておく。

市民からの質問は次のようなものであった。

息子のところに千葉市役所から自衛隊勧誘の葉書が届いた。個人情報の使い方に問題があるのではないか。

それに対する千葉市の回答内容を以下に要約する。

●自衛官の募集に関する事務の一部は、自衛隊法及び同法施行令に基づき、都道府県及び市町村が行うこととされている。
●質問の自衛官募集の葉書は、防衛省の機関である自衛隊千葉募集案内所が作成したもの。上記の法令に基づき、本市も発送費用の一部を負担しているため、はがきの差出人として記載されている。
●送付先については、自衛隊千葉募集案内所が住民基本台帳を閲覧し自ら決定したもの。
●住民基本台帳法で、国又は地方公共団体の機関は、法令で定める事務の遂行のために必要である場合には、市町村長に対し、当該市町村が備える住民基本台帳のうち氏名、生年月日、性別、住所に係る部分の写しの閲覧を請求することができると定められている。自衛隊千葉募集案内所による住民基本台帳の閲覧は、自衛隊法で定める自衛官募集事務のために行うものであり、法令に基づいた適正な事務である。
●総務省も、防衛省が職員の補充の一環として行う自衛官募集に関する事務について、住民基本台帳法に規定する「法令で定める事務の遂行のために必要である場合に該当する」と判断し、地方自治体あてに通知している。


少し気になった事がある。住民基本台帳で閲覧できるのは氏名、生年月日、性別、住所に限るのか、それだけで送付先を決定できるものなのか。そして去年と今年に、送付する数などに違いがあるのかどうか。

問い合わせ先が市民局市民自治推進部市民サービス課となっていたので、さっそく電話をしてみる事にした。しかし残念ながら担当者不在で、戻り次第連絡を頂く事になった。

ところで、狛江市では自衛隊員募集の葉書が届いたというような話を聞かない。千葉市からの連絡を待つ間、ここ狛江の事を狛江市役所に聞いてみる事にした。

結論から言うと、狛江市では自衛隊員募集葉書を送ることはやっていないとのこと。ただ、ポスターを掲示したり、その他自衛隊員募集関連の業務はやっている。それは自衛隊法97条と同法施行令で規定されている業務は行っているとのことであった。それは千葉市のホームページと当然ながら一致する。

自衛隊法97条(都道府県等が処理する事務)
都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務の一部を行う。


また自衛隊法施行令で本件に関連するのは第7章の雑則の第114条から119条までである。

自衛隊法施行令
第7章 雑則

(募集期間の告示)
第114条  2等陸士として採用する陸上自衛官(以下第117条において『2等陸士』という。)の募集期間は、防衛大臣の定めるところに従い、都道府県知事が告示するものとする。

(応募資格の調査及び受験票の交付)
第115条  市町村長は、前条の募集期間内にその管轄する市町村の区域内に現住所を有する者から志願票の提出があつたときは、その志願者が防衛省令で定める応募年齢に該当し、かつ、 法第38条第1項 に規定する欠格事由に該当しないかどうかを調査し、応募資格を有すると認めた者の志願票を受理するものとする。
2  市町村長は、前項の志願票を受理したときは、これを当該市町村を包括する都道府県の区域を担当区域とする地方協力本部の地方協力本部長に送付し、これらの者と試験期日及び試験場について協議の上、志願者に受験票を交付するものとする。

(応募資格の調査の委嘱)
第116条  市町村長は、前条第1項の志願者の本籍が当該市町村にない場合には、同条同項の調査を志願者の本籍がある市町村の市町村長に委嘱することができる。

(試験期日及び試験場の告示等)
第117条  都道府県知事は、当該都道府県の区域を警備区域とする方面総監と協議して2等陸士の採用試験の試験期日、試験場の位置及び名称その他必要な事項を定め、これを告示するものとする。
2  都道府県知事は、自衛隊が管理する場所、施設又は器具(以下本条中『場所等』と総称する。)以外の場所等を2等陸士の採用試験のため使用しようとする場合には、都道府県知事の管理する場所等又は他の者の管理する場所等をその管理者と協議の上、自衛隊に使用させるものとする。

(海上自衛官及び航空自衛官の募集事務)
第118条  都道府県知事及び市町村長は、第114条から前条までの規定の例により、2等海士として採用する海上自衛官又は2等空士として採用する航空自衛官の募集に関する事務を行う。

(広報宣伝)
第119条  都道府県知事及び市町村長は、自衛官の募集に関する広報宣伝を行うものとする。


仮に、防衛省から隊員募集葉書の送付業務の依頼が来たらどうするのかを伺った。お答えはそれはしないということであった。理由は、市が行うべき自衛官募集に関する事務は、自衛隊法施行令の第114条から第118条において細かく規定されている。葉書送付業務はその中にないというのである。
「なるほど、役所って、やらなくいい事は絶対やりませんからね」
僕は昨日の原子力規制委員会の方との話を思い出していたのである。先方も笑いながら「そうですね」と答えた。さらに僕は聞いた。
「千葉市のホームページによると、あちらは送付業務を代行する根拠を、自衛隊法においていらっしゃるようですが…」
「さあ、千葉市と自衛隊との間に事務的な申し合わせか何かがあるのかもしれませんが、千葉市のことは分かりかねます。」
「狛江を管轄する自衛隊は?」
府中分駐所です」
「なぜ千葉とは違うのでしょうか」
「さあ、政治的な事もあるのかも…」
この多摩地区あたりには共産党員が多いという話を聞いた事がある。そんなことも影響しているのだろうか。
しかしさすがに市役所の人はこう言った。
「これからは分かりませんが…」
安倍と石破のおぞましき顔が思い浮かぶ。
「もし、自衛隊法施行令の第119条の広報宣伝の範疇だとしたらどうなんでしょう」
「それは…」
狛江市役所の方は、あくまでも葉書送付業務は自衛官の募集に関する業務で、広報宣伝ではないだろうとしながらも、もしその根拠で話が来れば、その段階で市としてどう対応するかあらためて判断することになるだろうということであった。ともかく、依頼が来るまで判断することはない。なにしろ、やらなくていい事はやってはいけないというのが、日本国の役人の正しいあり方なのだから。

さあ、千葉市からの電話が楽しみになってきた。

自衛隊からの手紙の法的根拠考察(2)に続く…
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tag: 狛江市の政治 

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