2017年08月06日(日)15時53分
「あだ名ゲーム」&「食べる。」+“今井ミカ監督トーク”について他
《以下、Facebookに投稿》FBで見つけた記事の画像を拝借。まだ小生、実際の記事を見ていない。 pic.twitter.com/ALFLDXjPN9
— 高山正樹 (@gajumui) 2017年8月6日
何と言いましょうか、決して「字幕付き」をウリにしているわけではないのです。
確かに「FAKE」といい、今井監督の作品といい、今回は聴覚障がいに関する映画を取り上げた、そういう意識があったことも事実なのですが。
なかなか説明しにくいのですけれど、僕の頭の中は錯綜しています。それは「みんなで踊ろう」の時にもあったこと、いや去年の映画祭の頃からすでに分かっていたのですが、しかしどのように語っても誤解されてしまうのではないかと思い、というか僕自身が何かを見落しているような、あるいはこだわるべきではないことにこだわっているような気もして、結局ずっと口ごもっています。こんがらがった糸を、どうしたらほぐすことが出来るのか、ずっと考え続けている、分かりにくくて申し訳ありません。
その対極にあるのが「フリークス」です。ある意味、大変シンプル。御幣を恐れず申し上げると、とても分かりやすい。だから(と言っていいのかどうか)この映画に登場する「異形の人々」と「私」の間にある障壁を乗り越える方法は、とてもシンプルなのかもしれません。もちろん、そんな単純ではないということもよく理解したうえで申し上げました。
一方「FAKE」に登場する佐村河内氏の抱える「障がい」は、敢えて言えば分かりにくい。見終わった多くの人がモヤモヤするという感想を持つ。障がいがグラデーションだということを理解していても、それでもモヤモヤするのです。それは、真実が見極められないが故のモヤモヤとはどうも違う。彼を理解しようとするのだけれど、どうしてもその通信回路が繋がらないという感覚。
このあたりのことを、上映後に皆さんと語り合ってみたいと思っているのですが…
(今ツラツラと書いているのは、ボクの極めて個人的な感覚に過ぎないのかもしれません、ということを、ここらで申し上げておきます。)
その回路として、「手話」という手段を、僕が持っていないということ、その「不足」はとても大きなことです。そしてそれは、外国の方と言葉が通じないということとは違うのだろうと僕は思っているのです。思ってしまっているのかもしれません。
今回、全ての作品に字幕を付けるという挑戦をしているのですが、ボクは字幕が完璧な回路だとは全く考えていません。100の情報を流さなければいけないのに、その半分も流せないのではないでしょうか。
自前で文字起こしして作った字幕は、映画の画面の外側に別のスクリーンを準備してそこに映します。それは、映画を制作した方々に敬意を表して、できるだけ作品に傷をつけたくないということがあるのですが、しかしこの「傷」という言い方を、聴覚に障がいを持った方が聞いたら(←「聞いたら」も変ですね)どう思うでしょう。あえて「傷」という言い方をしたわけですが、気を使って別の言い方をしても、きっとその本質は変わらない。
一方、映画を制作した方は、字幕を別スクリーンに映したところで、どうしたってその文字情報に目が行ってしまうわけで、字幕は本来期待している伝達したいものが歪んでしまう結果をもたらす、と主張されるかもしれません。「歪む」も「傷」も同じです。
この世の中、誤解だらけです。1000人の友達がいたら1000の誤解があるのだろうと思います。でも、それがあるからこそ、とりあえずこの世の中は回っているのかもしれません。全ての誤解に気付いてしまったら、きっと生きられません。
でもね、それとは違うんだ!とボクは思ってしまっているのです。
8月24日(木)のプログラムNo.7は、「あだ名ゲーム」&「食べる。」+今井ミカ監督のトーク、というふうに発表しています。しかしここへ来て、その内容を少し変更しなければならない事情が出てきました。
みなさん「日本手話」というのをご存知でしょうか。
ネットでこんな説明を見つけました。
「日本手話は、日本語とは別の、独立した言語です。独特の文法体型をもっていて、日本語とは語順が違います。手の形・位置・動きに意味があるだけでなく、肩の向き・うなずき・顔の表情・眉や口の動きなどにも文法的な意味があります。これに対して、日本語対応手話は、日本語の語順で手話単語を並べたもので、その原型は聞こえる人によって作られました。だから、ろう児には理解しにくいのです。」
私たちがよく見かける手話通訳は「日本語対応手話」です。一方、外国で手話を覚えたという今井さんが出来るのは「日本手話」なのだそうです。今井さんご自身が耳の聞こえない方なので、今井さんの日本手話によるトークを読み取って、手話の分からないお客様には言葉で、もし「日本語対応手話」しか理解できない耳の聴こえない方がいらした場合には「日本語対応手話」も同時にやっていただかなければならないということなのです。それをひとりでこなせるものなのか、二人の通訳者をお願いしなければならないのか。
赤字を出しては続けていけない。なので「日本語対応手話」の通訳を頼むことすらできない我々です。それよりもずっと高額である「日本手話」の通訳の方を頼むことができるわけがない。(決して「日本語対応手話」が簡単で、だから安く頼めるのだなんて、爪の先ほども思ってはいません。そのことは何度でも申し上げておきたいと思います。手話通訳の方々が、とても安い金額で通訳を引き受けてくださっている現状も重々承知しているつもりです。そして深く感謝しています。)
最後は下世話な話になりましたが、それも僕が感じている「モヤモヤ」の一部ではあります。
まだまだお話したいことがあるような気もするのですが、今のところやはりなかなかうまく言葉にできません。そんな「モヤモヤ」を、今回おいでくださったお客様と共有できればと心から思っています。
《Facebookの沖縄グループに投稿》
ウチナーグチに、かつて「方言札」があったように、手話にも「手話札」というモノがあって、聾学校では手話が禁止され、手話を使った生徒に罰として「手話札」が首から掛けられたというのです。
「沖縄人」が「日本人」とコミュニケーションを取る方法、「聾唖者」が「健常者」とコミュニケーションを取る方法、僕が感じるモヤモヤには、そうしたことも絡んでいるのですが。
※当時ろう学校では、一般人と支障なくコミュニケーション出来るようにと、読唇術と口話が推奨されていました。その所為で(読唇術と口話の習得に時間を費やさざるを得なかったために)、ろうの子どもたちの学力は遅れてしまいました。
さらに映画祭の初日、20日の日曜日に開催される特別企画“夏休み こどももおとなもみんなで食堂”ではいくつかのパフォーマンスが予定されていますが、そこで大道芸をやってくださる星野りゅーた君のプロフィールが届きました。その中に次のような記述がありました。
幼少期から音のない世界で健常者と共に育ってきた。補聴器から入るかすかな音と口の動きを読み取る読唇術でコミュニケーションをとる。
そして所持する資格の中に「障害者職業生活相談員」というのもありました。
決して狙って人選したわけではないのですが、こうしたタイミングでの出会い、なんだかとても不思議です。
星野りゅーた君に会ったら、読唇術でコミュニケーションが取れる彼に、「手話」についてどう思うかを、是非とも聞いてみたいと思っているのです。
《補足》
1000人の友達がいたら1000の誤解がある。でも、聴覚障がい者といわゆる健常者との間の誤解はそれとは違う、という点に関して、少しだけ付け加えさせてください。まず他者との間の一般的に起こる誤解と決定的に違うのは、それが非対称の関係において起きるということです。それは、例えばマジョリティーとマイノリティーとの間の誤解すべてに言えることかもしれません。ただボクは、聴覚障がいを持った方との間に起きる誤解や無理解の背後には、それとは違う、もう少し本質的ともいえるような何かがあるのではないかと思っているらしいのです。自分のことなのに「らしい」とは、なんとも無責任ですが、今のところそうとしか言いようがない。だからここから先が説明しにくい。説明できないのであれば何ひとつ口に出すべきではないのかもしれません。
ともかく、考え続けています。そして自分自身も納得のいく「説明」を見つけたいと思っているのです。
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