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名作を聴く

※2019年4月、あっちこっちのブログ合体中。
※これは「おきなわおーでぃおぶっく情報」の6月6日の記事なのだが、何故かそこに添付してあるのは6月20日付けの新聞記事である。今となっては全て忘却の彼方。仕方がないので6月20日に転載することにする。


琉球新報の“落ち穂”というコラムに、図書館の司書でいらっしゃる呉屋美奈子さんが、「名作を聴く」と題して、“おきなわおーでぃおぶっく”の「大城立裕を読む」シリーズについて書いてくださいました。
大城先生を通じて、ブログ等へ転載することを呉屋さんより許可を頂きましたので、ここでご紹介したいと思います。

琉球新報
2009/6/20琉球新報
(画像をクリックすると大きい記事をご覧にれります。)


(目の御不自由な方のために、音声に変換ができるように、以下にテキストデータでも掲載いたしました。)

図書館を頻繁に訪れ、月に数十冊もの本を借りる利用者の方々がいる。普段、読まなければならない本に囲まれて「積ん読」が専門みたいになってしまった私は、内心忸怩たるものがある。日常の多忙さにまぎれて、なかなか読書の時間が取れないのは確かだが、日常の時間の使い方に工夫が必要だと思わされるのだ。

せめてもの工夫として、このごろ「聴く読書」をしている。仕事の往復で自家用車を利用するが、その時間に“読書”をするのだ。きっかけは“おきなわおーでぃおぶっく”である。県出身作家の作品を朗読作品にしており、これまでにも“大城立裕を読む”と題して「カクテル・パーティー」「対馬丸」を販売してきた。そのシリーズの最新作が、「ノロエステ鉄道」だ。

この作品は、日系移民を題材にした短編集『ノロエステ鉄道』より、表題作を朗読したものであり、著者である大城立裕自身が、実際にブラジルで取材をして書き上げたものだ。県出身の老女が、笠戸丸で出港し、足を踏み入れたブラジルでの過酷な労働、ノロエステ鉄道建設に関わった日々、第二次世界大戦、夫との死別・・、老女のブラジルでの日々は平坦ではなかった。しかし、それでも沖縄に帰れずにいる。若くして夫と移民という道を選んだその理由こそが、十字架となり老女を七十年もの間そこに縛り付けているのだ。日本の裏側で名もない老女が語る半生が名優久米明の声でよみがえる。過去に読んで感銘を受けた作品だが、音にしたときの響きの美しさは、新たな発見であった。

図書館では、視覚障害者のために録音資料を用意している。これらはテキストを機械で音声化したり、録音で吹き込む方法があるが、なるべく抑揚のない読み方で作成される。読み手に想像してもらうことを意図しているからだ。しかし、俳優やアナウンサーが読む朗読CDには、作り上げられた世界観があり、視覚障害者、健常者問わず今や誰もが利用できるユニバーサルデザインとなっている。特に物語が素材となっている場合は、読み方にストーリー性があるとより共感しやすい。皆さんも名作を聴いてみませんか。


呉屋美奈子様。ありがとうございました。
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