2009年05月12日(火)17時15分
新江戸噺“夢のかけら”と「船饅頭」“江戸みやげ たかはし”と“天ぷら片山”
20日に深川江戸資料館で三笑亭夢丸新江戸噺“夢のかけら”は、地元深川の船饅頭が主人公の人情噺です。
船饅頭とは、江戸時代に深川あたりの大川(隅田川)に船を浮かべて商売をしていた私娼のこと。
三笑亭夢丸さんによると、船饅頭を題材にした落語は、今までなかったんじゃないかなというお話でした。
(ちなみに、夢丸さんは2008年3月のNHK「日本の話芸」に出演され、“出世夜鷹”という噺について語っていらっしゃいます。今度夢丸さんに直接伺って、ここでご報告したいと思いますが、いずれにしても夜鷹を扱った落語はとても珍しいということらしいのです。)
しかし、なぜ落語では私娼を扱わないのか、ちょっと意外な感じがします。というのも、落語は反骨の精神を持って、お上(かみ)を笑い飛ばして相対化してしまうような庶民の芸であるはずなのですから。
その落語には、よく吉原の花魁が出てきますが、吉原は江戸幕府公認、だから吉原はそのまま「赤線」に変わっていくわけですが、夜鷹などの私娼はいわば青線のような場所さえ持たない女たち、「お上」からは見捨てられ、吉原とも対立する存在でした。料金も、今のお金に換算すると600円くらい。一方吉原はどうかというと、まあピンキリなのですが、一晩10万円以上というのが相場だったようですね。
ならば落語は、吉原の花魁より夜鷹のような私娼にこそ光を当てるべきではないのか、でもそうした噺が少ないのは、私娼が「しゃれにならねえ」くらいの哀しみに満ちていて、とても笑いにできるようなものではなかったからなのでしょうか。「夜鷹」を落語の題材にしない、それがせめてもの、哀しい女たちに対する落語の優しさだったのかもしれません。
さて、“夢のかけら”のことですが、登場する船饅頭は、実は足のない幽霊。これも考えようによっては深川だけに何とも「深いはなし」なのです。
ある資料にこんな記述があります。「夜鷹の足腰が立たなくなると、船中へ寝ころがったまま売笑した。」これが船饅頭だというのですから。
幼い頃に吉原に売られ、やがてわけあって吉原を逃げ出し、最後にたどり着いたのが深川の船饅頭。最初の客が酔っ払った旗本で、ちょっとしたいざこざで切り捨てられた女は大川の底へ、それでも船饅頭を続ける美しき幽霊、そんな女と出会った浮世絵師のはなし、さてこの人情噺にいったいどんな落ちがつくのか、皆様、20日の夜は、どうぞ深川の江戸資料館まで、是非ともお越しくださいませ。
さて今日、深川江戸資料館まで最終的な打合せに行ってきました。
先日も資料館のまん前にある深川めしのお店をご紹介したのですが、まあいってみればそのお店は吉原(ちょいと大げさ)、というわけで本日は、もう少し庶民的なお店をご案内いたしましょう。
深川江戸資料館の入口前にある“たかはし”というお土産やさん。
そこのご主人のたかはしさんであります。

大将は大道芸をおやりになるらしい。
「やってみる?」「やるやる。僕ね、実はやったことあんの、もう15年くらい前…」

「んじゃ、やってみな」
「よし…」

後は棒を真ん中に寄せるだけ…

「うまいうまい」

あれ大将、いつのまに南京玉すだれ出してきたの。
皿回しとの競演ですな。
(この南京玉すだれ、手作りです。注文すれば作ってくれます!)
この深川界隈の「本当のこと」は、この大将に聞けばなんでも教えてくれるのです。
というわけで、大将に教えてもらったお店に、お昼を食べにいくことにしました。
資料館の前の道を西へ、清澄通りへ向かって歩きます。
お、“たかはし”本店だ。

ちょっと寄ってご挨拶していこう。

路地には出世不動尊なんかがあったりして…

もんじゃもあります。
ここも大将お勧めのお店です。

清澄通りへ出たら左へ曲がると間もなく見えてくるお目当てのお店“天ぷら片山”

お品書きです。

あさりあんかけご飯をいただきました。
あさりの香りたっぷり。

神輿を担ぐために生まれてきたのだという御主人と奥様。

深川めしを出さないのはご主人のこだわり。その秘密は、この店を訪れて、どうぞ直接に御主人から聞いてみてください。
ほんとうにご馳走様でした。
20日の公演は、お店があるので残念ながらいらしていただけないのですが、しっかり宣伝してくださるそうです。深川をもっと売りにすればいいのにさと、アドバイスをしていただいて、そりゃそうだと、この記事を書くことにしたのです。
東大の落研出身の常連のお客さんがいらしていて、
「へえ、クラシックと落語を一緒にやるの、おもしろそうだねえ」
予定が入らなきゃ20日の夜、観に来てくださるとお約束してくださいました。
また“たかはし”の大将のところへ戻って、うまかったよと報告。
で、もっと安く食べるならこれだと“深川めしの素”をふたつ購入。

1個520円ですが、団体割引の場合は500円。
「何人から団体なの?」
「ひとり」
そして、町内会の会長さんに宣伝してきなよと大将に教えられて、近くの正覚院へ伺いました。

ここの御住職さんが一丁目の町内会長さんなのです。
御住職はお出掛けでいらっしゃらなかったのですが、落語好きという若いお坊さんが丁寧に対応してくださいました。
「落語の起源はお寺の説教ですからね」
なんだか、下町の暖かさに、胸が熱くなるような一日なのでした。
船饅頭とは、江戸時代に深川あたりの大川(隅田川)に船を浮かべて商売をしていた私娼のこと。
三笑亭夢丸さんによると、船饅頭を題材にした落語は、今までなかったんじゃないかなというお話でした。
(ちなみに、夢丸さんは2008年3月のNHK「日本の話芸」に出演され、“出世夜鷹”という噺について語っていらっしゃいます。今度夢丸さんに直接伺って、ここでご報告したいと思いますが、いずれにしても夜鷹を扱った落語はとても珍しいということらしいのです。)
しかし、なぜ落語では私娼を扱わないのか、ちょっと意外な感じがします。というのも、落語は反骨の精神を持って、お上(かみ)を笑い飛ばして相対化してしまうような庶民の芸であるはずなのですから。
その落語には、よく吉原の花魁が出てきますが、吉原は江戸幕府公認、だから吉原はそのまま「赤線」に変わっていくわけですが、夜鷹などの私娼はいわば青線のような場所さえ持たない女たち、「お上」からは見捨てられ、吉原とも対立する存在でした。料金も、今のお金に換算すると600円くらい。一方吉原はどうかというと、まあピンキリなのですが、一晩10万円以上というのが相場だったようですね。
ならば落語は、吉原の花魁より夜鷹のような私娼にこそ光を当てるべきではないのか、でもそうした噺が少ないのは、私娼が「しゃれにならねえ」くらいの哀しみに満ちていて、とても笑いにできるようなものではなかったからなのでしょうか。「夜鷹」を落語の題材にしない、それがせめてもの、哀しい女たちに対する落語の優しさだったのかもしれません。
さて、“夢のかけら”のことですが、登場する船饅頭は、実は足のない幽霊。これも考えようによっては深川だけに何とも「深いはなし」なのです。
ある資料にこんな記述があります。「夜鷹の足腰が立たなくなると、船中へ寝ころがったまま売笑した。」これが船饅頭だというのですから。
幼い頃に吉原に売られ、やがてわけあって吉原を逃げ出し、最後にたどり着いたのが深川の船饅頭。最初の客が酔っ払った旗本で、ちょっとしたいざこざで切り捨てられた女は大川の底へ、それでも船饅頭を続ける美しき幽霊、そんな女と出会った浮世絵師のはなし、さてこの人情噺にいったいどんな落ちがつくのか、皆様、20日の夜は、どうぞ深川の江戸資料館まで、是非ともお越しくださいませ。
さて今日、深川江戸資料館まで最終的な打合せに行ってきました。
先日も資料館のまん前にある深川めしのお店をご紹介したのですが、まあいってみればそのお店は吉原(ちょいと大げさ)、というわけで本日は、もう少し庶民的なお店をご案内いたしましょう。
深川江戸資料館の入口前にある“たかはし”というお土産やさん。
そこのご主人のたかはしさんであります。
大将は大道芸をおやりになるらしい。
「やってみる?」「やるやる。僕ね、実はやったことあんの、もう15年くらい前…」
「んじゃ、やってみな」
「よし…」
力を抜いて…
あら、よっと!後は棒を真ん中に寄せるだけ…
ほら、でけた!
「うまいうまい」
あれ大将、いつのまに南京玉すだれ出してきたの。
皿回しとの競演ですな。
(この南京玉すだれ、手作りです。注文すれば作ってくれます!)
この深川界隈の「本当のこと」は、この大将に聞けばなんでも教えてくれるのです。
というわけで、大将に教えてもらったお店に、お昼を食べにいくことにしました。
資料館の前の道を西へ、清澄通りへ向かって歩きます。
お、“たかはし”本店だ。
ちょっと寄ってご挨拶していこう。
路地には出世不動尊なんかがあったりして…
もんじゃもあります。
ここも大将お勧めのお店です。
清澄通りへ出たら左へ曲がると間もなく見えてくるお目当てのお店“天ぷら片山”
お品書きです。
あさりあんかけご飯をいただきました。
あさりの香りたっぷり。
神輿を担ぐために生まれてきたのだという御主人と奥様。
深川めしを出さないのはご主人のこだわり。その秘密は、この店を訪れて、どうぞ直接に御主人から聞いてみてください。
ほんとうにご馳走様でした。
20日の公演は、お店があるので残念ながらいらしていただけないのですが、しっかり宣伝してくださるそうです。深川をもっと売りにすればいいのにさと、アドバイスをしていただいて、そりゃそうだと、この記事を書くことにしたのです。
東大の落研出身の常連のお客さんがいらしていて、
「へえ、クラシックと落語を一緒にやるの、おもしろそうだねえ」
予定が入らなきゃ20日の夜、観に来てくださるとお約束してくださいました。
また“たかはし”の大将のところへ戻って、うまかったよと報告。
で、もっと安く食べるならこれだと“深川めしの素”をふたつ購入。
1個520円ですが、団体割引の場合は500円。
「何人から団体なの?」
「ひとり」
そして、町内会の会長さんに宣伝してきなよと大将に教えられて、近くの正覚院へ伺いました。
ここの御住職さんが一丁目の町内会長さんなのです。
御住職はお出掛けでいらっしゃらなかったのですが、落語好きという若いお坊さんが丁寧に対応してくださいました。
「落語の起源はお寺の説教ですからね」
なんだか、下町の暖かさに、胸が熱くなるような一日なのでした。
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Comment
紙で出来たお皿でよかったこと。
実はその「てんぷら片山」さんに先日その会場での本番が有った時に、僕も行ったんです!全然店の事は知らず、偶然見付けたんですけどね。それだったら、話しておけばよかったなぁ。。。因みに僕は穴子天丼を食しました。
20日はどうぞ宜しくお願いします!
【とよちゅんさんのコメント】
はじめまして。
興味深い記事をありがとうございます、『夢のかけら』の予習になりました!
深川にあるお店情報を参考に、散策してみます。今日はよく晴れてますし♪
わたしは落語に馴染みがなく、夜鷹・船饅頭はもちろん初耳です。へええ〜。
たしかにシャレにならない哀しみは、作品になってほしくない。
アゲ嬢(キャバクラの女の子)がファッションリーダーになり、
AV女優やフードルの美化・若年傾向が進んでひさしいけれども、
場末のピンサロで働く人の実情なんて絶対に明かされないし、
誰も知りたがらない。……現代ではそんなかんじでしょうか。
ともあれ落語たのしみです!
本番は楽しんでいただけたのでしょうか。
是非そちらへのコメントもお待ちしています
http://lince.jp/hito/hukaga...
長くなるので、感想はこちらに。
http://toyochun.exblog.jp/1...
http://lince.jp/mugon/kanba...
ところで、とよちゅんさんのブログで「また会いたい」とおっしゃってくださった「キャバレーの支配人みたいなヒゲづらのおじさんで、あやしい風貌に似合わぬ美声」というのは、私のことであります。
http://lince.jp/hito/mapinf...
…の記事の最後のところからどうぞ!